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/Dev チームファイト タクティクス:ドラゴンランドから学んだ教訓

「ドラゴンランド」から学んだ教訓と、新セット以降での教訓の活かし方についてお話しします!

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「ドラゴンランド」セットの終了まであと1ヶ月と少し。つまり恒例の教訓記事のお時間です。空を舞うドラゴンのような俯瞰視点でセットを振り返り、改善を約束していた点と新セット「モンスターアタック!」で改善を目指す点を見ていきます。


要約

今回の記事は長く、ゲームデザインに関わる記述も多くなるので、要約版を用意しました:

振り返り:前回の教訓記事で設定した目標の直接的な達成度の振り返りです。

  • バリエーションと新規性:「ドラゴンランド」の新ユニット製作においては、復刻ユニットを減らすことには成功した一方で、バリエーションは増やせずオーグメント/宝物龍頼りになる側面がありました。今後のセットでは、特性と既存ゲームシステムの工夫でバリエーションを増やせるよう取り組んでいきます。
  • アイテムシステムの不満点解消:宝物龍はアイテムシステム屈指の不満点を解消してくれましたが、この宝物龍はドラゴンランド固有種であるため、新セットでは新たな解決策が必要になります。代わりに導入する予定のアイテム金床(仮称)は提示される完成/素材アイテムからプレイヤーが選択するゲーム要素で、今後はこれを終盤戦の健全なアイテム分配を実現するための施策とし、以後のセットでも長期的に使用していく予定です。
  • へらと紋章:「大化けする」紋章が存在しないセットが2回続いていたため、今回は「大化けする」紋章を組み込みました。しかし、少々度が過ぎたと反省しています。フェスティバルデイジャ、龍術師ヌヌ、アサシンオラフなどの組み合わせはゲームを荒らす存在にもなりましたが、一方では紋章のバランス調整フレームワーク新設にも貢献してくれました。まとめると、次のセットでも「大化けする」紋章で強烈なコンボは作り出せるものの、これまでのようにバランス崩壊級の強さを示すことはなくなります。
  • オーグメント:オーグメントはTFTの常設要素となりました。これに合わせて開発チームも開発時間・人数を増やし、序盤から終盤まで一貫して良好なバランス状態を保ち、楽しくプレイできるオーグメントを実現するため注力していきます。


今後の取り組み:次のセット「モンスターアタック!」で改善を目指す目標項目です。

  • チーム構成のバリエーション:「ドラゴンランド」で得た最大の教訓は、「チーム構成の可能性を減らすことは常に悪いことである」というものでした。今後はゲームシステム、特性、チャンピオンのゲームメカニクスが本作におけるチーム構成の組み合わせを制限しないようにしていきます。
  • ドラゴン:2スロットを専有し、高価で、オリジン特性3体分としてカウントされるドラゴンは構成のバリエーション/柔軟性の大きな制約となっていました。これを鑑み、当面のあいだ2スロットユニットは使用しないこととします。
  • 想定されるチャンピオンの強さ:TFTにはある種の原則があり、それは全プレイヤーにとって当たり前のものとなっています。「★2同士を比較するとき、強いのはコストの高いユニットであるべき」も、そんな原則のひとつでした。しかし今回のセットにおいて、龍術師・ギルドザヤ構成はこのルールを裏切ることになりました。今後はTFTの原則的ルールに抵触しうる要素にはより一層の注意を払い、チャンピオン/特性/オーグメントの設計意図を壊さないようにしていきます。
  • 序盤のエコノミーとリスク&リターン:「ドラゴンランド」でエコノミー系特性の報酬パターンについて試行錯誤を重ねた結果、これらは「序盤戦の一般的な流れを歪ませる」と確信するに至りました。このため、今後のエコノミー系特性の設計ではキャッシュアウト型(報酬が一度に払い戻されるもの)に注力していきます。
  • バグとバランス調整:「ドラゴンランド」と「アンチャーテッド レルム」のリリース時に残っていたバグの数は許容できる範囲を超えていました。本件について、皆様を失望させる結果となったことを改めてお詫び申し上げます。複雑なセットリリースにかかわる課題を解決するべく、開発チームは現在も対策を練り続けており、より高品質なセットをリリースできるよう尽力していきます。本件については、また近日中にお知らせをしたいと考えています。
  • オーグメント:一部のオーグメントには終始悩まされ続けましたが、オーグメントがゲームにもたらしたバリエーションとワクワク感については極めて肯定的に捉えています。新セットではオーグメントシステムをひとつ上のレベルへ引き上げられるよう努めていきます。

振り返り

まずは前回の教訓記事を振り返り、評価してみます。

バリエーションと新規性:

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「ギズモ&ガジェット」最大の教訓は、TFTではバリエーションと新規性が極めて重要である、というものでした。これは「ドラゴンランド」にも当てはまるものだったので、本記事でも取り上げていきます。今セットでは上手く機能した点もあったものの、改善すべき重要なポイントも見つかっています。

前回の記事のバリエーションと新規性の項では、復刻させる特性およびティア3~4ユニットの数を減らすとお話しました。そして「ドラゴンランド」はティア4の復刻ユニットはゼロ、完全な復刻ユニットはダイアナ、ルル、ヌヌの3体のみとなっています。パンテオンなど過去セットと似たスキルを持つチャンピオンもいましたが、実は今後、復刻ユニットはすべてパンテオンのような変更を加えていきたいと考えています。復刻することがあっても、ティアは変わり、スキルにもちょっとした変更が入るといった具合です。ここには、ティアが上がる場合はチャンピオンのワクワク感を高める余地も生まれ、復刻ユニットが単なるダウングレード版になったり、過去セットと完全に同じ姿になったりすることも防げるという狙いがあります。

特性のほうはアサシン、ブルーザー、キャバリエ、メイジ、ミスティックのような、開発チームが「基本クラス」と呼んでいるもののみ再利用/復刻の対象とします。そして、これら基本クラスの出現頻度は今後高くなる予定です。基本クラスの効果、たとえば「チームの魔法防御を高める」効果をゲーム内で表現する方法はそう多くありません。そして別の方法で実装してもゲームをいたずらに複雑にするだけです。私たちはそのような事態は避けたいと考えています。このため高ティアチャンピオンとオリジン特性の再利用は引き続き抑えつつ、特定のベースクラスはキープしていきます。なお「モンスターアタック!」ではなんと、アサシン特性が登場しません!ついに一息つけそうですね。

前回の記事で、今後は大きな変化を生み出しうる小さなバリエーションを増やしていきたいとお話ししました。新セットではこの点について「ドラゴンランド」以上のことが目指せると考えています。今回は出現オーグメントとオーグメントティア出現パターンの変化が試合展開のバリエーションを大きく広げてくれました(シルバー/シルバー/ゴールドとプリズムx3では試合のプレイ感覚が全く異なりますよね)。宝物龍(混沌龍/秩序龍含む)も同様に貢献してくれるかと期待していましたが、こちらは毎回出現する単なるシステムのようになってしまい、バリエーションを増やす結果には至りませんでした。特性ではミラージュとシマースケールも一定の貢献を見せましたが、特性の場合は使わないという選択肢があるため、バリエーションを増やすわけではないとも言えるでしょう。しかし改善が見られたとはいえ、毎回ザヤ/セラフィーン構成をプレイすればマンネリ感は生じてしまいます。「ドラゴンランド」ではこの点を十分に解決できませんでした。このため、私たちは今後も小さなバリエーションを増やすシステムを追加していきます。

アイテムシステムの不満点解消:

前回の教訓記事で、魔力重視のチーム構成なのにラプターでB.F.ソード2本とネガトロン クロークがドロップすると本当にイライラする、というお話しをしました。今回のセットではこの問題を解決するためにステージ4-7に宝物龍を導入し、目当てのアイテムを狙って何度リロール(ゴールドを消費)するかの意思決定が追加されました。

この施策は大きな成功だったと考えます。構成の選択肢を強制的に狭めず、プレイヤーは目当ての完成アイテムひとつは(100%ではないものの)ほぼ確実に入手できる。とはいえ宝物龍は「ドラゴンランド」のテーマに合わせて製作された要素であり、他のセットにはまったく馴染まないため、残念ながら次セット以降で使い続けることはできません。また、セット固有要素を追加し続けていけばゲームは複雑になる一方で、新たなゲーム要素を追加する余地も(先ほど示した優先事項「新規性」も)減ってしまいます。つまり先に進み続けるしかないわけです。では新セットの計画は?

現在は新セットに向け、「レコニング」のアーマリーと今回の宝物龍で得た教訓を最大限に活かしたシステム「アイテム金床」(仮称)を開発しています。まず、ステージ4-7のPvEラウンドでは必ず「素材アイテムの金床」がひとつドロップし、主力アイテムの完成を後押しします。この金床にはプレイヤーの選択が試合に与える影響を強化する効果があり、またアーマリーと違って特定構成を強いることがないという利点もあります。加えて、ステージ5-7と6-7では完成アイテムの金床がドロップします。これで「相手が沈黙の帳を引いたのにこっちはサンファイア・ケープがダブったよ…」という悲劇は過去のものとなりますね。

というわけで、アイテム金床は終盤戦のアイテム分配問題を健全な方法で解決する施策になると考えており、長期的に使用していくシステムとするつもりです。また、この件については「常設ゲーム要素の候補をテストする環境として、メインのセット固有要素では大掛かりになりすぎるが、サブのセット固有要素はうってつけである」という別の教訓も得ることができました。このため同様のセット固有要素は今後も継続的に試験導入していくことになるでしょう。このようなアプローチで皆さんに愛されるゲーム要素を試行錯誤・特定していけるのは、TFTのセット式運営モデルと、フィードバックを寄せてくれる活発なコミュニティーが揃っているおかげです。

へらと紋章:

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前回の記事では「レコニング」と「ギズモ&ガジェット」には「大化けする」可能性を秘めた紋章がほぼ存在しなかったと述べ、「ドラゴンランド」では極端なケースを避けずに攻めてみる、そのための紋章もいくつか用意するとお話しました。しかしドラゴンランドでは明らかに、あまりにも「攻めすぎて」しまいました。

約束は果たせたが、もっとやりようがあったはずだ、ということです。まずリリース直後。アニビア/シヴァーナがフェスティバルの紋章を所持した場合のためだけにバランス調整せざるを得ませんでした。それでもフェスティバルデイジャはその後も残ったままでした。また初期にはメイジオレリオン・ソルのリワークも必要になりました。その後もウィスパーデイジャが恐怖の化身となったり、ウィスパーセラフィーンがPBEで猛威を振るったりもしました。そして「アンチャーテッド レルム」の開始時には、龍術師ヌヌがプレイヤー層の半分を食らい尽くしていました。他にもアサシンオラフ、キャバリエヤスオ、ウォーリアーグレイブス…例を挙げればきりがありませんね。まだアストラルの紋章の話をしていないのにこれとは…なんてこった!言うまでもなく、開発チームは本件の方向性を誤り、さらにやり過ぎていました。そして結果的にゲームバランスに大きな悪影響を生じさせてしまいました。

一方で、この失敗の中にも収穫はありました。紋章のバランス調整フレームワークを構築できたのです。このフレームワークの主要な思想は、特性の紋章が生み出せる戦力は、対象特性の中心的チャンピオンと同等にするべきである、というものです。今後は紋章を設計する際に、まず特性をいちばん有効活用するユニット(例:フェスティバルならばコーキ)を把握し、次にチャンピオンラインアップ全体を精査し、各ユニットに紋章を装備させた時の強さが比較対象としたユニットよりも若干弱い/強い程度に抑え、特性の強さの上限を「突き抜ける」ことがないように配慮していきます。これであれば、デイジャのような特性バランスブレイカーが新たに生まれることはなくなり、フェスティバルのように特性の効果と所属チャンピオンの相性が基本的に悪いことも予防できるでしょう。まとめると、「TFT:モンスターアタック!」でも紋章にはエキサイティングなコンボを生み出す可能性を残しますが、「ドラゴンランド」の時のような極端な強さは生み出さないようにします。

オーグメント:

オーグメントはそれ単体で記事が書けるほどのテーマです。今回も特に重要な意味合いを持つテーマであり、直近ではTFTの常設ゲーム要素になったことも発表したため、本記事でも振り返りと今後の取り組みの両項で取り上げることにしました。こちらの振り返りの項ではまず前回の約束について振り返ります。まず取り組んだのはオーグメントの「引きムラ」を軽減するという課題です。こちらはリロールボタンを導入することで解決しました。いつ使うかが「腕前表現」となり、引きが悪かった時の救済措置としても機能しているため、このリロールボタンは次セットでも採用します。

次に取り組んだのがオーグメント同士のパワーバランスの根本的改善と、出現ルールの改善による無意味な選択肢の削除でした。こちらについては、まだまだ改善の余地があると考えています。「ドラゴンランド」では最初に引くオーグメント次第で試合の趨勢がほとんど決まる状態がとても長い期間続き、中でもステージ2-1の即決xアストラルコンボ、一緒が一番xセラフィーンコンボなどは、オーグメントのバランス状態として過去最悪クラスのものでした。

この領域はさらなる改善が必須であるため、現在はオーグメント専任メンバーを配置・増員して対策に当たっています。「ドラゴンランド」ではいくつかの難問に直面しましたが、私たちは今後も恐れることなくオーグメントのような楽しいゲーム要素を模索し続け、常にバランスの良い状態で運用できるよう努めていきます。容易なことではありませんし、すぐには達成できないでしょう。しかし私たちは、あきらめずに達成を目指します。

今後の取り組み

チーム構成のバリエーション:

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「TFTは、有効なチーム構成が山ほどあるメタで遊ぶのが一番楽しい」、これは「ドラゴンランド」屈指の教訓でした。ユニット/特性/アイテム/オーグメントの組み合わせの数、可能性の数は膨大で、だからこそ1000試合遊んでも新しい発見があります(エレクトリック オーバーロードのミラージュ(8)とガーディアン(8)が達成できた試合は鮮烈でした。あなたの一番鮮烈な思い出はどんなものでしたか?)。リプレイ性と新発見は極めて重要な要因であり、この点においてチーム構成のバリエーションを減らすことが「正しい選択」になることはほとんど(あるいは絶対に)ありません。

その好例がスケールスコーンでしょう。これはテーマの設定上「ドラゴンと組み合わせて使うことはできない」特性でした。確かに世界設定としての合理性はありますが、ゲームプレイ上ではチーム構成の幅が制限されるため、たとえばショップで運良くイダスを引いても泣く泣くスルーするしかない、という事態も起こりえます。これではショップに選べないユニットが並んでいるのと同じです。

そこで今後は、システム・特性・チャンピオンのいずれにおいても、チーム構成の組み合わせを制限するようなゲーム要素は採用しないようにします。今セットでも「アンチャーテッド レルム」に入って意外な構成を試せるようになると、ゲームの状態は明らかに良くなりました。ではこの点を踏まえた上で、一番セットを荒らしてくれたドラゴンたちに触れていきましょう…。

ドラゴン:

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ドラゴンは上の「チーム構成のバリエーション」のサブテーマでもありますが、同時にそれ単体でも極めて重要なトピックでもあります。端的に言って、ドラゴンは苦い教訓としてTFTの歴史に刻まれることになるでしょう。少なくとも、私たちが期待したほどの成功を収めることはできませんでした。テーマという観点から見れば、巨大で強力なドラゴンを中心にチームを構成するというのは良さそうなアイデアですが、ゲームの仕組みという観点から見るとその魅力を遥かに超える「害」が生じていました。

まず「ドラゴンランド」のリリース時点では「ドラゴンは1体のみ」としましたが、これが大きな間違いでした。チーム構成のバリエーションをかつてないほど大きく制限してしまったのです。たとえばイダスを起用した場合、それ以降は他の6体のドラゴンがショップに出ても邪魔なだけになり、以後はイダスを中心に試合を進めなくてはなりませんでした。また特性カウントが+3されるため、その特性を更に有効活用するべきだと強く意識するようになります。たとえばシヴァーナを起用するのであれば、少なくともレイジウィング(4)は必要で、この追加の1体の存在もチーム構成の切り替え難易度を上げてしまっていました。この点は「アンチャーテッド レルム」である程度修正できましたが、ドラゴンはこの他にもゲームプレイ上の問題を複数抱えていたため、結局完全解決には至っていません。

ドラゴンが抱える次の問題はコスト——ゴールドと占有スロット——です。2スロットを占有するユニットは「ギズモ&ガジェット」のコロッサスでも試していましたが、当時はタンクのみでした。そこで私たちは「2スロットの魔力系遠距離キャリーがいたらどんなふうだろう…?」と考えたわけですが…その答えは皆さんご存知の通りです。

そして強力であるとはいえ、構成変更にかかるゴールドは大きく跳ね上がりました。リロールして集める時でも、サイ・フェン2体を抱えているだけで14~16ゴールドをつぎ込んでいる状態です。そして運良く3体目を引けたとしても今度は代わりに下げるユニット2体を選定しなければなりません。通常であれば盤上のユニットと新ユニットを入れ替えるだけなので、これも大きな違いです。

そしてオリジン特性+3の効果もプレイヤーに対する強烈な誘導効果がありました。プレイヤーはオリジン特性を必要としないドラゴン(オレリオン・ソル、アオ・シン)を引く場合もあれば、可能な限り上位ティアを目指すべきドラゴン(シ・オー・ユー、デイジャ)を引く場合もあります。ギルドデイジャのようにミラージュ(4)で十分な構成も存在しましたが、多くのプレイヤーには「正しいプレイは上位ティアを目指すことだ」という印象を与えてしまい、これがチーム構成の選択肢を狭めていました。

以上のことを考慮し、当面のあいだ2スロットユニットは使用しないこととします。ごく一部の特性であれば機能する余地はあるでしょう。しかし2スロットユニットというゲーム要素は、長期的に見てTFTに健全でない影響を与えるものだと判断しました。

想定されるチャンピオンの強さ:

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数年という期間のあいだに、プレイヤーの皆さんの間にはTFTの共通認識や原則のようなものが育まれてきました。基本的・明白な原則もあり、これが破綻するとゲームの状態は著しく悪化します。

たとえば「★2ティア4チャンピオンは、★2ティア3チャンピオンよりも強い」という原則は、基本的に誰もが同意してくれるのではないでしょうか。

しかし龍術師のように効果を1体のチャンピオンに集中させる特性では、この原則が破綻してしまいます。そして今セットでは、たとえば3コスト★2のヌヌが7~8コスト★2のドラゴンたちを蹴散らし、倒されることなく無双していく状況が生じ、これまでの原則を完全に崩壊させました。当然対戦したプレイヤーは、ヌヌより強いはずのチャンピオンを揃えて特性も発動させているのに負けるのか?と感じます。ここで問題となったのは、1体のチャンピオンに効果を集中させる特性と、抜群に相性の良い低コストチャンピオンの組み合わせです。

龍術師はその最たる例でしたが、ドラゴンもまたある程度まで同罪と言えます。たとえばこちらにアイテム/特性の揃った★2シ・オー・ユーがいて、対戦相手がアイテム/特性の揃った★2ザヤを所持していたら、原則に沿って考えればこちらのキャリーのほうがコストの高いため勝利するはずだと考えられます。しかしほとんどのメタにおいて、その推測は正しくありませんでした。そしてプレイヤーはまたしても敗北の原因に混乱します。「より高価で強力なキャリーを正しく運用したはずなのに、なぜ負けるんだ?」と。

以上を踏まえ、今後はTFTの原則的ルールに抵触しうる要素にはより一層の注意を払い、チャンピオン/特性/オーグメントの設計意図を壊さないようにしていきます。これは簡単なことではなく、白黒はっきり判断できる問題でもありませんが、少なくとも今後は一層注意深く配慮するようにしていきます。

序盤のエコノミーとリスク&リターン:

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続いては、前回お話したTFTにおいてエコノミー系特性が重要な理由と、扱いやすく盛り上がる特性を作っていくという約束について触れていきましょう。まずシマースケールからは(部分的にはアストラル/ラグーンからも)、少量持続型報酬とキャッシュアウト型報酬の違いについて、非常に深い考察を得ることができました。

少量持続型報酬とは一定の条件を満たしてターンを終了すると、毎回少額の払い戻しが得られるタイプを指します。アストラルを発動させているとオーブが得られる、一部のシマースケールアイテムの条件をクリアすれば2ゴールド程度が入手できる、といったものです。この種の少量持続型報酬は、利子システム/エコノミーのしくみ上、特にステージ2で発動できた場合に極めて強力です。ステージ2-1と2-2で5ゴールドを入手すれば、そこから利子を増やし、対戦相手に大きなゴールド有利をつけられます。

一方で、キャッシュアウト型報酬はある程度の期間をかけて条件を達成した場合に報酬を受け取ります。「ドラゴンランド」では決断せし投資家(シマースケール専用アイテム)が一番近い存在ですが、過去セットのフォーチュンやマーセナリーのほうが分かりやすいかもしれません。

そして実は、キャッシュアウト型報酬のほうがゲームの健全性・楽しさの両面で優れています。まずはその理由を分析してみましょう。毎ターン2ゴールドと、10ターン後に25ゴールドだったら、多くのプレイヤーは一度に25ゴールドのほうが満足感があるとして選ぶのではないでしょうか。しかし実は、2ゴールド/ターンのほうが圧倒的に強力であり、その影響力は序盤において特に顕著です。「強力な条件のほうが面白くない」わけですから、いささか残念な結果ではあるのですが。

そこで今後は、エコノミー系特性をキャッシュアウト型モデル中心で設計し、序盤戦に少額持続型報酬が発生することがないよう意識していきます(ゲームテンポを崩壊させるため)。なお、先の文で「序盤」と明示的に記載した点にご注目ください。1ターンごとに8ゴールド付与の特性があっても、ステージ4以降でしか発動しないのであればそれまでのラウンドでエコノミーとチーム構成をある程度確立しているため、ゲームテンポはそれほど崩れません。またこれは特性限定の方針であることにもご留意ください(特性はプレイヤーが使用しない判断を下せるため)。一方、エコノミー系オーグメントも基本的に問題ありません。オーグメントの選択はそれを使い続けるという意思決定で、後から変えられないため、その部分のトレードオフでバランスを調整できるからです。

バグとバランス調整:

この点については率直に申し上げて、皆さんを大変失望させたと感じています。「ドラゴンランド」と「アンチャーテッド レルム」のリリースパッチはどちらもバグがあまりに多く、さらにバランス調整にも時間がかかりすぎました。オーグメントに加えてドラゴンなどの新しいゲーム要素を実装したことで組み合わせのバランス調整難易度が上がり、自分たちの対応能力を超えてしまったのだと思います。カスタマイズコンテンツ部分でも、新タイプのマップやブームに着手したことで複雑な問題が生じ、解決までにかなりの期間を要することになりました。

もちろんこういった部分を一気に是正することはできません。TFTは複雑なゲームであり、実はゲーム開発とは大変な作業ですから。しかし私は別に開発の辛さを訴えたいわけでもありません。今はただ、TFTチームがこれらの課題を解決し、より高品質な状態でセットをローンチできる体制を構築するためにアクションを取り始めたことをお知らせします。もしかしたら、TFTのゲームアナリシスチーム(GAT)で新しい求人を出したのをご覧になった方もいるかもしれません。当該役職(あるいはその他のTFTの役職)の仕事に興味のある方ならば、あの長いリストの中にぴったりの職種があるかもしれませんね。こうしてアナリシスチームの人員強化を図っているのも施策の一つですが、人事のあらゆる事と同様、これには時間がかかります。今はバグとバランス調整との戦いについて詳しくお話しできる日が一日も早く訪れるのを願っています。そして現時点では、ひとえに皆様のご協力とご理解に深く感謝申し上げます。これはプレイヤーの皆さん全員にとって重要な問題であり、つまり私たち開発チームにとっても非常に重要な問題であると考えています。

オーグメント:

最後に――2度目になりますが――オーグメントについてお話しします。ご存知の通り、オーグメントはTFTの常設ゲーム要素となりました。素晴らしいポテンシャルを秘めたシステムをこうして常設化できたことは喜ばしい限りですが、このシステムは解決せねばならない大きな問題もいくつか存在します。

一部のオーグメントは未だに序盤戦で強力すぎますし、ステージ2-1で下した判断がそのまま試合後半にまで大きく影響するのはいささかやりすぎです(最も極端な例は「アンチャーテッド レルム」で変更が入るまで可能だった、ステージ2-1の即決xアストラルコンボでしょう)。

一方では、活用方法が限られすぎている弱いオーグメントもまた懸念点です。殺し屋や後悔にワクワク感はほとんどなく、ソウルサイフォンは単純に分かりにくいオーグメントでした(おまけに1パッチのあいだ正常に動作していませんでした)。

もちろん優れたオーグメントとして活躍したものもありました。特別製とダブルトラブルは、普段とは全く異なる、楽しく工夫しがいのあるプレイスタイルを推奨するオーグメントでしたし、新オーグメントの犠牲的協約(リワーク前)や継続性などは記憶に残る瞬間を生み出してくれました。そしてもちろん、新しいオーグメントのアイデアや既存オーグメントの改善案もたくさんあります。

このため、オーグメントシステムでは現状維持や使い回しではなく、更なる進化を目指していきます。モンスターアタック!ではこれまで以上にゲームの中核をなすゲーム要素として扱い、将来的にはシステムを一層奥深いものにしていく予定です。いずれ訪れる詳細公開日をどうぞお楽しみに。というわけで、オーグメントシステムに関するフィードバックは引き続き絶賛募集中です。

今回の記事はここまでです。TFTをプレイしてくれる皆さん、フィードバックを寄せてくださる皆さん、本当に感謝しています。私たちから「皆さんの声は聞こえていますよ」と表現する手段は主に、こういった記事で表現することと、得られた教訓をモンスターアタック!やその後のセットに反映していくことのふたつです。…そういえば、明日にもお知らせしたいことがあるんでした。そちらもぜひお見逃しなく!それではまた!楽しくいきましょう!



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