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アーリのアップデートの進捗報告です。

Dev作者Ahri ASU Team
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編集注:お伝えしたいことが多くてかなり長い記事になってしまいましたが、どうぞお楽しみください!

皆さんこんにちは!アーリASUの担当プロデューサー、Layla “yoganinja” Jeanです。アーリのASUについては先日のLoLPlsでも基本スキンコンセプトとVFXの進捗を披露しましたが、今回はプロジェクトの舞台裏を少し紹介したいと思います。まずはアーリ固有のお話をする前に、ASUに関するおさらいから。

ASU(アート&サステナビリティ・アップデート)の主な目的は文字通りサステイナビリティ改善、つまり今後のスキン開発を容易にすることです。時が経つにつれて古いチャンピオンのスキン製作難易度は上がり、一方で私たちの技術力や品質水準は年々進化しています。ASUはそういったチャンピオンたちのスキン開発環境を整備するための取り組みで、エンジン上でのデータ構造を最適化する、パッケージ間でのアートオーサリング手法を整理する、新しいツール/技術を導入するなど幅広い作業を行います。

一方で「アート」は二次的な要素で、古いチャンピオンを最近の品質水準まで引き上げることを目指します。ASUの内容と規模は対象チャンピオンによって毎回変わりますが、通常は基本スキンと1350 RP以下の全スキンをアップデートしています。ここで古くなったゲーム内ビジュアル/アニメーション/オーディオなどを最新の品質水準まで引き上げ、チャンピオンのDNA/メインテーマ表現を強化します。

ASUは他のアップデート(VGU、CGU)と違い、ゲームプレイやスキルの機能には一切手を入れず、また物語を刷新することもありません。

ASU対象の選定時には上述の要因をすべて考慮しつつ、技術的負債、複雑性、アート品質、チャンピオンの人気度などについても議論します。

今回アーリが選ばれたのも条件をすべて満たしていたからです。事実、アーリは多くのプレイヤーに愛されているチャンピオンでありながら、新スキンをリリースするたびに「リグ/アニメーションが古くさい」というフィードバックを寄せられていたのです。彼女の基本スキンには新チャンピオンでは必須扱いとなっている基本的なアニメーションですらいくつか欠けているほどでしたから、それも当然かもしれません。要するに、ASU対象として理想的だったのです。

というわけで、ここからはアップデートの進捗を見てみましょう!

ナラティブ

Elyse “Riot apothecarie” Lemoine - シニアナラティブライター

今回のアーリは私にとってケイトリン以来のASUで、あの時の皆とまた仕事ができる!と大変楽しみでした。個人的にもアーリメインなのでなおさらです。しかし同時に、アーリほど圧倒的な人気を誇るチャンピオンの台本を書くのはかなり怖いことでもあります。

ASUにおけるナラティブチームの目標はふたつ。ASUチームと協力してナラティブ要素をまとめていくことと、対象チャンピオンのナラティブを現在の品質水準まで引き上げることです。

チャンピオンアップデートの場合、私はタスクを複数のステップに分解して取り組んでいきます。

  1. 対象チャンピオンを調査する(既存コンテンツを念入りにチェック)
  2. プレイヤーが対象を愛する理由を理解する(強さの源は何か?)
  3. 総合ストーリーガイド(性格の柱となる要素、背景、目的、信条、交友関係などをそれぞれ細かくまとめたもの)を作成する
  4. 収録台本を完成させる

もちろん実際には他にも、既存の台本を読み込んで引き継ぐべきセリフを選定したり、「キャラクターの声」を引き出すために超ショートストーリーや実験的な台本を書いたりするなど細かい作業がたくさんあります。しかし台本製作のベースとなるのはやはり上述のガイドです。ナラティブをひとつにまとめあげ、キャラクターの声をブレさせずに力強く表現する上でこれは欠かせません。

「セリフ160個分の台本書き」といえばシンプルな作業に聞こえますが、上のような念入りな準備は協業プロセスをより良いものにしてくれます(ライターが全員同じ手順で仕事をするわけではありません)。私自身も進捗管理しやすくなりますし、ナラティブアセットをチームと共有できるのも長所だと思っています。

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アーリのASUプロジェクトは「ルインドキング:リーグ・オブ・レジェンド ストーリー」のリリース後だったため、同作の内容を組み込む余地がありました。ただし、それにはまず「アーリの基本スキン用新台本は、ルインドキング以後/以前のどちらとして書くのか?」を決めなければなりません。チームは最終的にコンセプトアートリードThomas “Riot Hylia” Randbyと話し、「ルインドキング」後のアーリのほうがプレイヤーは喜んでくれるはずだと判断しました。同作の中でアーリは大きな成長を遂げていたため、それを無かったことにして「顔を上げて前に進むのではなく、過去の痛みから逃げていた」時代に巻き戻すのは大きな損失だと考えたのです。

この決断のおかげで新アーリの台本を書くのはずっと楽しい仕事となりましたし、同時にアーリの未来を描く余地もずっと広がりました。後悔という過去の痛みを脱ぎ捨てた今の彼女は、これからまっさらな目で世界を見据え、未来に向かって進んでいきます。

コンセプト

Thomas “Riot Hylia” Randby - リードコンセプトアーティスト

新しいチャンピオン/イベント/映像作品がリリースされるたびにLoLの世界に没入する方法は増えていきますが、ナラティブの進化/変化スピードがあまりに速いため、その速度に置き去りにされるキャラクターも出てきます。たとえばケイトリンなどは、LoL黎明期―ピルトーヴァーの個性が確立されておらず、単なるスチームパンク調の奇妙な都市だった時代―の遺物のように感じられる部分がありました。

一方でアーリの場合、プレイヤーは高画質で細かなニュアンスまで描かれたアーリの姿を何度も目にしています。LoL、「ワイルドリフト」、「レジェンド・オブ・ルーンテラ」のシネマティックに出演しているだけでなく、「ルインドキング」では新たなデザインでさまざまなキャラクターと交流する重要キャラクターでもありました。このためチームとしては、アーリを再発明するのではなく、プレイヤーがこれまで目にしてきた彼女のイメージまで引き上げることを目指しました。

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チームが最終的に選んだのは、「A New Dawn」出演時の姿と「ワイルドリフト」のターンテーブル上の姿をブレンドし、そこにルインドキングへのオマージュをひとつまみ加えた姿でした。上質なシルクのような布地の質感と流れるような長い髪を見せつつ、ワイルドな側面とヴァスタヤの優美さを強調するための要素も維持しています。なお、髪の毛が少しだけワイルド寄りになっているのは、「ルインドキング」で力と本能を制御しきれず獣感が増した姿になった時のオマージュです。この"獣感"はスピリットラッシュ中に見ることができます。瞳に危険な光が宿り、尾を広げる姿を表現しました。

アーリならではの苦労としては、スキンが大量にあるという点も挙げられます。各種スキンも基本スキンに負けじとさまざまな舞台に出演していたため、チームはそこからも新デザインのインスピレーションを得ています。

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たとえばK/DAとK/DA All Outのシネマティックで描かれている細かなディテール。これは今回リグやモデルを新調したことでゲーム内ビジュアルに反映できるようになりました。

アーリの新スキンリリース時に寄せられる反応のうち、一番多いのは尻尾に関するものでした。旧アーリは各尻尾の起点が同一ではなく、ひどいめり込みが発生していたのです。めり込みは背中や太腿、時にはスネにまで達していました。ASUではこの問題を解決するため、尻尾と体が物理的に接続する部分の生地を各スキンで複数レイヤー化し、レイヤー1で起点をマスクし、レイヤー2を尻尾の下に配置して起点が必ず体に接しているようにしています。

アーリのビジュアルを現在のLoLの品質水準まで引き上げる仕事をこのチームでできたことは、私にとって大きな喜びであり光栄なことでした。彼女がサモナーズリフトを駆け巡る姿を見られる日を今はただ楽しみにしています!

テクニカルアート

Izzy Cheng - シニアテクニカルアーティスト

リギング作業ではアーリの尻尾が非常に重要になることは分かっていました。ゲーム中の視認性にもキャラクターイメージにも影響するためです。やるからには、視覚的に綺麗に見えることはもちろん、今後スキンを開発する同僚が扱いやすい(サステナビリティの高い)構造にしたいとも考えていました。

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尻尾のリグについてはアニメーター、キャラクターアーティストと協力して試行錯誤を繰り返し、楽しさ、なめらかさ、ふわモコ感を追求しました。尻尾のリグではさらにリアルさも追求し、1本単位でも9本全体でもなめらかに動くようにしてあります。ここではそれぞれの尻尾が滑らかな弧と曲線を描き、優雅に見えることを目指しました。

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尻尾以外では、アーリのリグ全体を整理整頓し、現在の新チャンピオンと同等の水準にまとめています。

アニメーション

Einar “Riot Beinhar” Langfjord - シニアアニメーター

ASUはケイトリンに続く2回目でしたが、LoL屈指の人気キャラクターを現在の品質基準に引き上げる仕事ができるなんて!とひたすら感激していました。アーリは極めて複雑なキャラクターなのでいくらでも語れてしまいますが、今回はアーリならではの個性「九尾」に話題を絞り、サステナビリティとビジュアル品質を両立させるために私たちが取ったアプローチを紹介してみます。

アニメーションの勘所を考えた時、「九尾の狐」というイメージを正しく表現することが最優先事項のひとつであるのは明白でした。彼女の尻尾は大きなポテンシャルを秘めた個性なので、その見た目を仕上げるために時間と労力はしっかりとかけています。

しかし1体のキャラクターに9本の尻尾をつけるだけでも大仕事なのに、見た目にまでこだわるわけですから、これは一筋縄ではいきません。そこで私はテクニカルアーティストのIzzyと密に連携を取り、まずアーリの尻尾に必要な機能を特定していきました。その結果、1本のメイン尻尾と9本の個別尻尾をブレンドする手法が最適だと判断。これであれば挙動も優秀で、毎回それぞれの尻尾をこまかく調整する必要もありません。その後はさまざまな値をテストし、納得のいく尻尾の挙動システムを完成させていきました。

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初期の尻尾アニメーションテスト。目指すはサステナブルなワークフロー

尻尾用に安定したシステムを組み、各挙動のアニメーションを製作していくのも極めて重要ですが、「九尾の狐」のリアルな表現を追求するならば、プレイヤーの入力に反応させないわけにはいきません。そこで私たちはゲームシミュレーションシステムを用いて各尻尾に常時ライブシミュレーションを適用することにしました。尻尾にはそれぞれ微妙に異なる移動値を指定して本物の狐の尻尾のようなリアルな印象を実現。その上にほんのり魔法的ニュアンスを重ねています。敵のスキルショットを避けて獲物を狩ってこそのアーリ。それならば、ただ走り回るだけでも楽しくなくてはいけませんからね。

尻尾の物理演算新旧比較

チャームはアーリを象徴するスキルです。そこでチームはインパクトを高めるために尻尾の動きも活用したいと考えました。彼女の妖艶さをより明確に表現しつつ、尻尾の新しいリグの限界に挑む素敵なポーズを狙ったわけです。

しかしここで問題となったのはカメラアングルでした。特定の角度から格好良く見えても、別の角度では格好が良くない場合があったのです。

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狙った角度から映した場合には格好良く見えますが、反転させると魅力半減…これでは魅了できません

それでも最終的には面白いと方向性だと判断し、元々は1つだったチャームのアニメーションを角度ごとに合計4つ作り、発動時に向いている方向に応じて再生されるようにしました。文字通り、東西南北の方位ごとに異なるアニメーションを再生するようにしたのです。

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向きごとに専用アニメーションを作ったことで、アーリはどの向きからも完璧なチャームを飛ばせるように

VFX

Riot Sirhaian - シニアVFXアーティスト

ケイトリンの時と同様、アーリもASU着手前にVFXアップデートが実施されていたため、VFXの作業はシンプルで作業量も多くありませんでした。ASUではゲームプレイを変えませんし、古いVFXは全体的にアップデート済みだったのでVFXの作業自体がほとんど不要だったのです。実質的にはスキルVFXのサイズをヒットボックスに調整し、過去のパーティクルを少しクリーンアップするくらいでした。ビジュアル改善のために少しディテールを足した箇所もありましたが、いずれも大掛かりなものではありませんでした。

基本スキンのQのビジュアルアップデート。このスキルのVFXは実装部分のコードを修正する必要が生じたため、何度も制作やりなおしが発生。

「古いチャンピオンのバックエンドを修正する」というのはASUの主目標のひとつですが、その点アーリは摩訶不思議な部分をたくさん抱えていました。スパゲッティのようにからみあったコードを解きほぐしていった結果、一部のVFXは再作成/大がかりな調整が必要になったのです。たとえばQなどは、0.5倍速で再生されるようになっていました。これは「通常の」ゲーム速度で表示したければ、2倍速のVFXを作成する必要があった、ということです。

この問題を修正するには、全スキンのQのVFXを「新しい、通常の」速度に合うよう調整しなくてはなりません。またアーリの内部には使用されていないVFXが山のように残っていました。たとえば回復効果バージョンのオーブとQ、リリース前に作られたと思しきVFX、果てはネクサスブリッツの最初期に使われていた独自パーティクルなど…。今回私たちはこういった過去の遺物を一掃し、今後アーリのスキンに携わるVFXアーティストが“Ahri_Base_R_Tumblekick_tar_02"(アーリ基本スキンR空中回転蹴り02)のような謎のVFXに悩まされることがないようにしています。

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Qを撃った後、アーリの体がヒモのように細くなる面白バグが発生したこともありました

アーリのASUが始まるまでルーンテラにおける霊的エネルギーにはあまり明確な定義がなく、アーリの力についても霊的エネルギーであることくらいしか分かっていませんでした。霊的エネルギーとはどんな見た目なのか?どう流れるのか?色は?形は?プレイヤーの抱くイメージを変えずにこの力を表現する方法は?分からないことだらけです。こうした質問の答えを導き出すには、たくさんの時間とチームの協力が欠かせませんでしたが、最終的には優しいロウソクから立ち上る煙流のような、ゆっくりと上へ流れるソフトな水色のエネルギーであると決定しました。

基本スキンのアップデート版W。狐火の軌道が調整され、優雅さがアップしています。

アーリにとってオーブは特に重要な視覚的要素なので、狙い通りのビジュアルを目指してひたすらに試行錯誤を重ね、くっきりと狐の模様をしたオーブに細かなディテールを描き込んだバージョン、小型のオーブをぼんやり描いたバージョン、そして各種中間バリエーションなどを試していきました。

最終的にはカメラの角度とアーリの行動速度を考慮し、くっきりとした形のオーブにうっすらと渦状の狐の模様を足し、そこに立ちのぼるエネルギーとたなびきを重ねたデザインにしています。この"たなびき"は素早い動きを強調し、うっすらと加えた狐の模様はリコール時の印象をしっかりと彩ってくれました。オーブに精緻な狐の模様を描く案も試してみたのですが、テストをしてみると小さなエリアにディテールを詰め込みすぎたせいで視認性が悪く、ノイズの原因にもなっていました。

狐の模様は時折うっすらとだけオーブ上に現れます。目を凝らせば分かる一方で、標準カメラ上では視覚的ノイズにならない加減になっています。

アーリのチャームは論争を巻き起こすことが多いスキルでした。視認性の悪い角度があり、3Dのときと2Dのときがあり、当たり判定の幅や開始位置が見えにくいことがあったためです。そのためASUでも何度となく試行錯誤を重ね、各チームと議論を重ね、最終的には3Dのハートが高速回転しながら射出され、まっすぐ飛んでいく案を選びました。これであればハートの形状が角度に関係なく発動直後から認識でき、幅も固定されます。2Dのハートは一部のスキンで引き続き使用していますが、これはサイズの一貫性とビジュアルテーマ(『Arcane』など)を維持する場合に限定しており、それ以外のスキンでは3Dのハートで同様のモーションを採用しています。

基本スキンのE。チームとVFXコミュニティーメンバーにテーマ表現とゲームプレイの総合点を評価してもらったところ、全員がこのバージョンを選びました

ULTのVFXでは地面のデカールだけに頼るのをやめ、周囲を漂う魔法的オーラでアーリが強力になる雰囲気を表現するべく努めました。そして地面のデカールは薄くした上で残りスタックを示すように変更しています。ULT発動中の雰囲気が以前よりも怖く、それでいて優美になったのではないでしょうか。

その他のVFXについてはまた今後紹介していきますのでお楽しみに。それでは仕事に戻りますね。最高の出来栄えを目指し、引き続き全力で取り組んでいきます!

オーディオ

Emmanuel “Riot Gunlap” Lagumbay - サウンドデザイナー

新スキンの制作時、サウンドチームは毎回サウンドの聞こえ方を調整しています。しかし基本スキンに手を入れることはすなわち全スキンの基準となる音を変えることになるので、これはかなり緊張感のある仕事です。しかも私の上司は初期アーリのサウンドデザインを担当したメンバー。緊張感も倍増です。

とはいえ、アーリ専門家が隣にいるというのは幸運だったと言うべきでしょう。上司との会話は実に実り多きもので、アーリが今のサウンドに至るまでの思考の流れや、アーリが持つオーラの雰囲気を現在のLoLのビジュアルスタイルに合わせて進化させる方法などを学ぶことができました。そして私たちの議論は最終的に「テイルズ・オブ・ルーンテラ:アイオニア」シネマティックの印象に落ち着いていきます。総合的な視点から見てアーリにぴったりの舞台だったからです。

私たちのチームはアーリのサウンドを現在の水準へ改修するならば、まずはアーリが内に秘めた精霊の魔法を解き明かすべきだろうと考えました。彼女のスキルセットにはパチパチ、ブワッといった音や、燃える炎と組み合わせて使われることが多い破砕音のサウンド要素が多く使われています。そこで炎をメインテーマとするブランドやアニーなどとの差別化を進めるため、今回は精霊っぽい音を組み込むことにしました。しかし「青色の、精霊の魔法っぽい音」がどんなものかなど誰も知りません。

精霊の花祭りのサウンドテンプレート

そこでサウンドカタログ(これまでLoL用に制作したサウンドやサウンドのパーツをまとめたもの)をチェックしてみたところ、過去には霊的領域の魔法を表現する機会がほぼなかったことが判明しました。精霊の花祭りは?と思う方もいらっしゃるでしょう。しかしあれは「ルーンテラの精霊魔法」ではなく、「ルーンテラの人々が想像する精霊魔法のイメージ」です。このため、今回は避けることにしました。その後私たちはルーンテラの精霊魔法を突き詰めていき、最終的に精霊の花祭りで使われた「風の音」ではなく、キラキラ感を少し乗せた「チャイムっぽい音」を採用することに決めました。ボーカル要素も少しだけ入っていますが、シャドウアイルのチャンピオンたちのゴースト的サウンドと違って敵対的な雰囲気はほぼ感じられません。

ここで面白い小ネタをひとつ。オリジナルアーリのQの命中音は、実は通常攻撃の命中音と同じでした。当時はそれほど珍しくない仕様で、特にキャスターチャンピオンの通常攻撃はスキルよりも重要度が低いので、似たような用途では同じアセットを再利用することで時間と容量と節約していたのです。

私はこれを両方のサウンドエフェクトに改めて向き合うチャンスと捉え、音にわずかな調性を加えることにしました。またQの命中音については、往路で最初のターゲット/複数ターゲットに命中したときの音、そして復路の効果音一式も追加しました。これで効果音でも通常ヒット(往路)と確定ダメージ(復路)を区別できるようになり、オーディオミキシングを整理して、ウェーブクリア中にミニオンに多段ヒットさせた時の効果音の鳴り方と再生時間をまとめることができました。

現在のチャンピオンの基準と比較した場合、アーリのスキル効果音の一部は長すぎました。そうした効果音が尻尾のように長く続くことにかけて、「アーリはもう9本も尻尾があるんだからこれ以上はいらないよ」なんてジョークをよく言ったものです。

サウンドデザイン最後の大型変更はULT発動中のループサウンドでした。スピリットラッシュを発動したアーリにオーラが残っているかどうかはプレイヤーにとって重要な情報です。そしてオーラがキル/アシスト獲得で更新されることを考えると、各プレイヤーが状況を把握した上で意思決定できるようにするのが望ましく、それには邪魔にならない範囲でULTの状態を伝え続ける方法が必要だと考えました。同様の理由から、オーラが消える時にだけ鳴る効果音も追加しています。

それではまた

アーリASUの完成はもうしばらく先ですが、今回紹介した内容が気に入ってもらえていれば幸いです。来年初旬のリリースまではしばらく音沙汰がなくなると思いますが、どうかお待ちくださいね。

ご覧いただきありがとうございました。感想お待ちしています!

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