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/dev: ユーミのリワークを送り出す

ゲームデザイナーのTruexyとAxesが、ユーミのリワークにおける変更点や目標について話します。

Dev作者Riot Truexy, Riot Axes
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ユーミのリワークがついにライブサーバーに導入されました。そこで今回は、数年にわたるバランス変更の乱高下をくぐり抜けてきたユーミのリワークの舞台裏、そして今後の彼女の方向性についてお話ししてみたいと思います。

ユーミはリリース直後から二面性を持つネコチャンでした。ひとつめの顔はキュートで抱っこしたくなるサポート。経験の浅いプレイヤーがサモナーズリフトで繰り広げられる"計算ずくのカオス"に慣れていくのに最適そうなテーマです。しかしふたつめの顔は、ゲーム屈指の強力サポート。こちらは対象指定不可になる能力、通常攻撃、行動妨害能力(CC)を完璧に使いこなした時の姿です。

この2つの側面により、ユーミは全チャンピオン中でもトップクラスのメインプレイヤー数と…対戦時のイライラ度を誇るチャンピオンとなりました。そして昨年、私たちは判断を下します。どちらか一方の顔を選び、そちらに全力を注いだほうがLoLにとっても健全だと。それから数ヶ月。新たな固有スキル、より素敵になったVFX、そして願わくば「全員にとって楽しい」ゲームプレイを手にしてユーミは帰ってきました。

目標

初めての"メインチャンピオン"を探しているプレイヤーにとって、ゲームプレイ/テーマがプレイヤーと共鳴することは極めて大きな要因です。ヤスオを初めて見たプレイヤーは風を操るサムライが高速コンボを決める姿を思い浮かべ、そのスリルを体験しようと使い始める、といった具合です。メイジが好きなプレイヤーであれば、ラックスやブランドから強力な魔法を操るイメージを浮かべるでしょう。そしてユーミのリワークでは、この点を特に重視して目標を設定しました。ワクワクを求めて味方から味方へ飛び移る気まぐれエンチャンターというイメージは非常に魅力的である一方、そのイメージをユーミの旧テーマとプレイヤー層と合致させようとするのは「解決する問題よりも生み出す問題のほうが多い」状況を生み出しかねなかったのです。そして私たちは議論の末、友だちからLoLを習っているプレイヤーと、純粋に猫を愛するプレイヤーにとって最高のユーミを目指すことにしました。

この方向性を目指し、リワークでは次の点をメイン目標としました:

  • MOBAに初めて触れるプレイヤーにとって好ましいゲーム体験を作り出す
  • 「味方1人を護る能力に長けたエンチャンター」をユーミの特徴として強調する
  • 対策方法を増やし、ユーミの長時間対象指定不可能力を成立させる
  • 最適化された行動を追求しにくくし、プロシーンにおけるユーミの存在感を制限する

新しくなったスキル

YuumiP2.png

固有スキル - ネコはトモダチ

まずは特に大きな変更点のひとつから。ユーミの固有スキル名がネコはトモダチ(Pに変更され、内容も回復効果と新しいゲームプレイ要素「ベストフレンド」の2つに分かれます。リワーク前はバビューン!(Eがユーミの回復手段であり、エンチャンターらしさの主軸でした。

また、旧ユーミは回復がメインの(最も頻度の高い)「出力要素」で、戦闘外の時間に味方の体力バーを満タンにできていたため、リワークに際しては旧Eのマナコストとクールダウンの長さを大きく制限する必要がありました。そこで新ユーミのバビューン!(Eでは出力要素をシールド付与に変更し、体力回復はチャンピオンとの戦闘中のみ可能になるよう調整しています(これには後述するアルティメットが関係してきます)。これで味方を護る能力は保持しつつ、味方の体力を延々と回復し続ける能力は制限されることになるでしょう。

そして新ユーミのもう一方の固有スキルは「ベストフレンド」との絆作りに特化したものになっています。

ユーミがくっついた味方が敵やミニオンをキルすると、ユーミは絆を育み始めます(絆はユーミの体力バーとベストフレンドの足元に表示されます)。そしてユーミは絆が一番強い相手にくっついていると、自身のスキルが強化されます。ユーミはレーン戦の相棒を支援する機会が多くなることが想定されますが、ユーミの支援能力は遠隔通常攻撃系チャンピオンとの相性が良いものが揃っているため、自然とスケーリング能力も最大化しやすくなります。

ただしユーミが絆を切り捨てる判断をした場合には、新たな絆を育むのにはかなりの代償を支払うことになります。この変更で目指した主目標は2点。ユーミにとってレーン戦の意義を高めること、そしてユーミの相棒であるキャリーのレーン戦体験を改善することです。

ユーミは味方にずっとくっついていられるため、その時点で最も強い味方チャンピオンと同等の強度を発揮できました。これは言い換えれば、「味方の誰か」が順調に育っている限り、ユーミにレーン戦でどれほどプレッシャーをかけてもほぼ無意味だったということです。そしてこれは、ユーミの相棒となるボットレーンキャリーにも辛い体験となっていました。

エンチャンターに守られたキャリーは楽しいものです。たとえ序盤戦で弱くても、後で無敵のキャリーマシーンになれる可能性があるから耐えられるので。しかし相棒がユーミの場合、このトレードオフは成立しません。過酷なレーン戦を耐え切っても「あなたの」サポートは育ったアサシンにひょいっと飛び乗り、1v9の夢は彼らのものになってしまう。新しい「ベストフレンド」要素では、ユーミのテーマを明確にしながら、こういった問題も解決していければと願っています。ベストフレンドと並んで戦う時、そこには湧き上がる力と興奮があるはず。誰が相手でもある程度の強さは発揮できますが、一番相性が良いのは遠隔通常攻撃系チャンピオンになるでしょう。

YuumiQ2.png

Q - きまぐれミサイル

ユーミの代名詞的なスキル、きまぐれミサイル(Qにも大きな変更が入っています。独自の操作性を持つこのスキルは、チーム連携が取れる環境において特に高い安定性を発揮していました。

旧バージョンではくっついた味方がダッシュスキルを持っていれば、容易に距離を詰めてスロウ効果付きの高火力スキルショットをほぼ確実に当てることができました。必然、バランス調整は非常に難しくなります。火力が高ければAPキャリーユーミが登場し、対象指定不可のためにゲームを脅かすほどのリスクとなるし、スロウが強力になればほぼ必中のCC要素となるため同様に巨大リスクとなる…。結果、バランス調整ではスキルの安定性に手を入れるしかありませんでした。

新スキルでは、マウス操作は短時間のみ受け付け、その後一気に加速して飛んでいきます。これまでユーミに対するバフはチーム連携が取れる環境で活躍しすぎてしまうリスクと隣合わせでしたが、この変更により命中率が下がり、きまぐれミサイルのピール性能や回復要素などユーミに様々なバフを入れる余地が生まれてくるでしょう。

YuumiW.pngYuumiW2.png

W - ユー&ミー!

対象指定不可状態で活躍が狙えるユー&ミー!(Wのテーマは維持しつつ、いくつか小さな変更が入っています。強力な攻撃系ステータス付与と対象指定不可効果をひとつのスキルに同居させると、ユーミのスノーボール性能が相手にとって絶望的なレベルになり、またあらゆるチャンピオンのスケール性能を跳ね上げてしまうリスクがあることは周知の通りです。

そこで今回は、ユーミの固有スキルをより防御的な効果に変更し、さらにベストフレンドに特化したものにしました。つまりユーミはチャンピオン1体の保護能力においてLoL屈指のエンチャンターになるものの、その強さは無条件に試合を決めるほどではなく、レーン戦で相棒にアドバンテージを作っていく必要がある、ということです。

続いてはバビューン!(Eについて。固有スキルでも言及した通り、ユーミのメイン防御系スキル効果を回復からシールドに変更したことは、ユーミプレイヤーが完璧なタイミングで味方を救うより健全な「腕前表現」につながるでしょう。

また本スキルには、「くっついた味方に少量のマナを付与する」という細かな新効果も追加しました。そりゃあネコがくっついてくれたら精神力も回復するから当然ですね。追加になった経緯は、ヒール効果を削除したためにユーミが戦闘外でバビューン!を使う有効な理由がほぼなくなってしまい、旧ユーミよりも操作する楽しさが下がってしまっていたためです。そもそもユーミはくっついていれば移動先をクリックする必要すらありませんからね。これは戦闘外で飛び回るちょっとしたインセンティブ(少量のマナ付与)ですが、ミニオンを押し込もうとしているレーンの相棒にマナを差し入れして手伝う、なんていうのもユーミならではの動きとなるでしょう。

YuumiR.png

R - ファイナルチャプター

そして最後は、ファイナルチャプター(R。ここでもきまぐれミサイルユー&ミー!の変更と同じく、ユーミの強さを繰り返し撃ち込める攻撃/CCから防御的なものに移行させようとしています。旧アルティメットは強力でしたがすっぽ抜ける場合もあり、味方との完璧な意思疎通(完璧な!意思疎通!)ができておらず虚空に向けて渾身のアルティメットを放つことがありました。もちろん高度な連携が取れていれば回避不能のスネアであり、機動力の高いファイターや前衛にとっては理想的なスキルだったと言えるでしょう。しかし後衛キャリーにくっついて活躍するチャンピオンを目指しているのに、それでは正反対です。

このためリワーク版ではスネア効果を削除し、代わりに味方を回復するようにしました。これは戦闘の前線めがけて放ち、敵・味方をできるだけ巻き込むスキルとしては大きな改善ですが、ファイターにくっついて敵1体をキャッチしようとするならば大幅な性能低下と言えるでしょう。また新しいアルティメットでは、きまぐれミサイルと同様に進行方向をマウスで調整できます。つまり今後は、なぜか範囲外に出ようとする偏屈チームメイトを回復したり、逃げようとする無礼な敵にスロウをかけたりできるようになるわけです。

Yuumi_Icon.PNG

以上、ユーミのリワークについてのお話でした。新しくなったスキルが全プレイヤーにとってのユーミの存在価値を高め、またユーミメインのみなさんが思い描くエンチャンターらしさを体現するものになっていることを心から願っています。改めて、いつもLoLをプレイしてくれてありがとうございます。それではサモナーズリフトでお会いしましょう!




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