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リード ゲームプレイ デザイナーRiot Axesが、ミッドシーズンの今後の計画と、近く導入されるミシックアイテムへの変更についてお話しします。

Dev作者Riot Axes
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こんにちは、リード ゲームプレイ デザイナーのRiot Axesです。今回はLoLにおけるアイテムシステムとミシックアイテムの現状についてお話ししたいと思います。現在のアイテムシステムを導入してから約2年半が経ち、私たちは今、LoLにおける本システムの未来図を描こうとしています。まずはLoLに現在のミシックアイテムシステムが導入された経緯から振り返ってみましょう。

プレシーズン2021のアイテムアップデート

前回のアイテムアップデートの目標はプレシーズン2021直前の記事でも詳細にお話ししています。アイテムの状態が私たちの目指す水準に達していなかった、というのもそこでお話しした通りです。優れたアイテムシステムは、満足感があり、試合ごとに適応・最適化が必要で、さまざまなプレイスタイルを促し、プレイヤーにとって直観的であるべきです。

そして2021年のアップデートでは次の3つを主要領域と定め、その改善に注力しました:

  • アイテムショップの更新。ユーザー体験の最適化、「おすすめのアイテム」ページの大幅な改善、プレイヤーが各チャンピオン使用時にビルドしたデータの自動反映。
  • ミシックアイテムを、重複不可で、プレイヤーが1試合に1度だけ選択する、多くの状況で最初に購入するアイテムにする。
  • アイテム開発では全チャンピオンに複数の選択肢がある状態を目指し、細心の注意を払いつつ製作する。特定のミシックアイテムの購入率が75 %を超えず、チャンピオン1体につき購入率3%以上のレジェンダリーアイテムが10個以上のある状態を作り出す

上記目標を達成するには、33%の新規アイテムを追加し、33%のアイテムを変更し、34%のアイテムを最小限の変更に押さえる必要がありました。

それでは続いて、アイテムシステムの成果を一緒に見てみましょう。

アイテムショップ

これはかなりシンプルですね。UI刷新と「おすすめのアイテム」の全改修は非常にうまくいきました。変更…とりわけUIの変更に拒否反応が出るのは自然なことであるため、当初はUI変更に不安の声もありましたが、しかし懸念はすぐに消えました。

「おすすめのアイテム」は導入直後からかなり高い使用率を記録しています。現在は68%のプレイヤーがアイテムメニュー操作のメイン手段として使っており、これは旧システムのときよりもかなり高い数値です。私たちはこれを良い成果だと見ています。試合状況に対して最適なアイテムを選ぶ能力は重要ですが、基本的かつ強力なアイテムにアクセスしやすい仕様はLoLというゲームの「始めやすさ」を大幅に高めてくれます。そういったプレイヤーの皆さんは、何をいつ買うべきかのニュアンスをプレイを重ねていくうちに学び取っていくでしょう。

しかし、新しい「おすすめのアイテム」が大きく成功したからこそ、開発目標が「混線」してしまう部分もありました。プレイヤーの70%が「おすすめのアイテム」機能を使っている状態で「いずれかのチャンピオンのミシックアイテム購入率が75%を超えないこと」を目標としても、大多数のプレイヤーの判断が似通うのは当然です。とはいえ、プレイヤーはチャンピオンの習熟度が上がるほど「普通」のビルドから逸脱しやすくなるという傾向については裏付けとなるデータがかなり揃っています。これはつまり、「おすすめのアイテム」は毎試合完璧なビルドを提示する機能ではなく、基礎を示すものである、ということです。

ではミシックアイテムシステムの導入以後、うまく機能していたのはどの要因だったのでしょう?

ミシックアイテム—機能した点

以下に、ミシックアイテム関連で特に成功を収めた要因を示してみます。

  • 柔軟性- チャンピオンが最初に購入するレジェンダリー級以上のアイテムの幅が広がりました。実際、初手で「逸脱したビルド」を選ぶチャンピオンはミシックアイテムシステム実装前よりも一般的になっています。さまざまな理由から、対象チャンピオンに深く習熟すると「おすすめのアイテム」システムで提示されるアイテムよりも柔軟性が高くなるようです。ただし一部のチャンピオン/アイテムの組み合わせは例外で、クラーケン スレイヤー、ルーデン テンペスト、ディヴァイン サンダラー、イモータル シールドボウの4つは特定チャンピオンとの結びつきが特に強く、購入率も85%を超えています。
  • クールさ - クールでプレイヤーの感性に刺さるアイテムをかなりの数作成してきました。赤月の刃、心の鋼、ジャック=ショー、ゲイルフォース、新版ロッド オブ エイジスはそれぞれに愛好家を生み出し、またシステムに深みを与えています。LoLはそもそもRPG的な成長サイクルを中心に設計されたゲームであり、パワーアップを楽しむ感覚はそのサイクルの楽しさを維持する上で重要ですから、この要因も非常に重要であると言えるでしょう。
  • 始めやすさ - ミシックアイテムの存在はアイテムシステムにおける区分を明確化し、入門プレイヤーが始めやすい環境を生み出しました。ミシックアイテムx1、ブーツx1を揃え、あとは必要なレジェンダリーを買っていく、という構造はシンプルで、アイテムシステムに関する判断が理解・記憶しやすくなったのです。またミシックまで完成させられれば一定の強さが体感できるようにもなっています。
  • バランス調整の容易さ - ミシックアイテムの存在は、複数個買えてしまうと強力すぎる/バランス調整が困難すぎるアイテムを、単体でのみ使用できるものとして作成する手法を可能にしました。

しかし、今回のブログ記事で取り上げたい話題はもうひとつあります。「これからミシックアイテムのどこを改善していくのか?」です。

機能しなかった点

ミシックアイテムシステムには先述のような利点もありますが、皆さんから寄せられる幾多の不満点もたしかに存在します。私たちとしても現在のミシックアイテムの状態には満足していません。初期の目標にも間違っている部分がありましたし、その結果として私たちのアイテム理念も進化を果たすことになりました。ミシックアイテムの短所の中でも特に大きく、皆さんからの不満の声が多く、改善する上での課題も多い要因は以下のとおりです。

  • 満足度 - 満足感の高いゲームデザインよりも最適化・選択肢の幅を優先したことで、多くのチャンピオンは「一番クールなアイテム」ではなく、あまりワクワクしないアイテムを買わねばならない状況になってしまいました。たとえばモルガナとフィドルスティックスは、ライアンドリーの仮面よりもゾーニャの砂時計を常に重視します。これはゾーニャの発動効果をもってスキルセットが完成するほどの影響力を持つからです。また一部の極端なケースでは、アイテム選択肢の目標を達成するために満足感のある完璧すぎるアイテムを削除せざるを得ませんでした。もし旧アテネの血杯が残っていたら、エンチャンターチャンピオンに他のアイテムを検討してもらうのは極めて困難でしょう。毎回「プレイヤーが選択できる」という目標を優先するために、チャンピオンに「しっくりくる」アイテムを除外する結果となったのは、振り返ってみれば目標が間違えていたのだと考えます。
  • 超汎用アイテム - ミシックアイテムは多様なチャンピオン(すべてのADC、大半のファイターなど)がビルド初期から活用できるものでなければならないため、生み出す影響の種類が多すぎる傾向がありました。チャンピオンが「役に立っている」と感じる条件は―特に序盤戦においては―実に多種多様です。しかし単一アイテムの効果が強力すぎて、効果の種類も多すぎるならば、それはゲームの健全性にとって深刻な問題です。その結果、ゴアドリンカー、(旧)赤月の刃、ディヴァイン サンダラー、リフトメーカー、イモータル シールドボウなどのアイテムはバランス制御不能な状態にありました。
  • 複雑性 - ミシックアイテムは高い複雑性を備え、何らかの活用パターンを生み出す傾向があります。ドラクサー ダスクブレード、プローラー クロウ、エバーフロストなどは特に顕著な例で、開発チームが看過できないレベルで「パターンを歪める」ような側面があり、結果としてゲームの複雑性を高め、大きなフラストレーションを生み出していました。
  • アイテム開発 - ミシックアイテムはいずれか1つしか所持できないため、新ミシックアイテムを開発する時も既存の全ミシックアイテムを精査し、新アイテムとの複雑な関係性を読み解く必要がありました。2年半経った今もまだ、システムにアイテムが揃ったとは言えません。ベースとなるアイテムは揃っているかもしれませんが、今後必要になってくるのは継続的に改善していける環境です。

以上の内容をまとめると、現在のミシックアイテムはゲーム品質を犠牲にしすぎており、今後はその点を解消すべく計画を進めていきます。


ミッドシーズンの変更

MSIの閉幕後、私たちは次の3領域について大規模な変更を導入していきます。

ここでの大枠の目標は、ミシックアイテムがより強力で、より満足感が高く、(戦況パターンに応じて選び取るアイテムではなく)ビルドの最終形を定める最上位アイテムとなるシステムのテストバージョンを試験することです。新システムではミシックアイテムの理念を多数のチャンピオンで変更していくつもりで、購入率75%という旧指標も終了します。今後の最重要指標はプレイヤー満足度で、たとえ対象チャンピオンが毎試合同じミシックアイテムをビルドしていたとしても、この指標を優先します。

なおADCのアイテム選択肢は上述のミシックシステム構造に最も近かったため、総合的な変化がもっとも大きくなっています。ライブ環境におけるADCのミシックアイテム選択肢はゲイルフォース / イモータル シールドボウ / クラーケン スレイヤーと、インフィニティ エッジ / ナヴォリ クイックブレード/ グインソー レイジブレードの2つに分かれ、ユニークな制約を生み出していきます。なお、ADC向けミシックアイテムは新モデルへ移行し、インフィニティ エッジ、ナヴォリ クイックブレード、グインソー レイジブレード、ゲイルフォースの4つとなります。クラーケン スレイヤーとイモータル シールドボウはレジェンダリーアイテムとして再設計し、他のアイテムについては適宜リワークしていきます。その他の要注目アイテムとしては…スタティック シヴがシステムに復活(付与ステータスは刷新)し、グインソー レイジブレードが旧バージョンに近い性能になる予定です。

新システムではすべてのADCに「満足感の高い」ミシックアイテムが1つ以上用意される予定ですが、おそらく一部のチャンピオンには「一番相性の良い」ミシックアイテムが存在することになります。とはいえ、かなりの数のチャンピオンにはミシックアイテムの選択肢が複数個用意され、選ぶアイテムによってスキルセットのどの要素を活かすかが変わってくることになるでしょう。

なお今回のミッドシーズンでは、ADC以外にエンチャンターアイテムと脅威アイテムにも取り組んでいきます。脅威については、プローラー クロウとドラクサー ダスクブレードにまつわるゲームの健全性問題を解決するため、ターゲットを絞って変更を実施する予定です。具体的にはプローラー クロウの機能を新たにして(ダッシュを削除して)レジェンダリーアイテムにリワークし、ドラクサー ダスクブレードをリワークし、妖夢の霊剣を性能強化した上でミシックアイテムに昇格させます。

エンチャンター向けアイテムも多数リワーク予定です。リワークの主な目標は使用時の満足感向上、ビルドパスの改善、そして結果の満足度向上です(かつてのアテネの血杯を新たにアレンジしたものもあります)。


未来の話

これから私たちが判断を下そうとしているのは、「私たちは長期的にミシックアイテムをどうしていくべきなのか?」という重大事項です。

そして現在は、あらゆる選択肢を評価している段階です。ミッドシーズンの変更—特にADCアイテムシステムの変更—はアイテムシステムの実際的選択肢をより明確に示してくれるでしょう。そのデータが出揃うまでの間は、社内で並行して多数の案を精査していきます。

今回の記事がアイテムシステムとミシックアイテムに対する私たちの現状認識を示し、今後数ヶ月の予定をお知らせする役に立っていれば幸いです。なお、ミッドシーズンの変更がある程度落ち着いたら、アイテム関連の今後とプレシーズンに向けた展望を改めて投稿する予定です。それでは、サモナーズリフトでお会いしましょう!

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