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/Dev: VFXアップデートの製作舞台裏

VFXアップデートプロセスの流れとプレイヤーの皆さんにできることについて。

Dev作者Riot Sirhaian, Riot Riru
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どうも、Riot Sirhaianです!職種はスキンチームのシニアVFX(ビジュアルエフェクト)アーティストで、LoLチャンピオンの古いVFXをアップデートする仕事も担当しています。

VFXアップデートは数年前に私が個人的な取り組みとして始めた活動で、当時はベイガーの「イベントホライズン」を作り直していました(アップデート前のVFXも大好きでしたが)。そしてあれから数年…今は情熱あふれるVFXアーティストで小規模チームを組み、LoLチャンピオンたちのVFXを現在の水準まで引き上げること、そしてゲームプレイの視認性を改善することを目指して活動しています。

もちろんVFXアップデートは今も複数プロジェクトが進行中。そこで、この機会にVFXアップデートが始まった経緯、プロセスの進め方、そして皆さんにできることについてお話ししてみようと思います。ぜひお付き合いください。

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ベイガーのイベントホライズン - 2018年のアップデート前後

VFXアップデートとは

現在VFXアップデートでは、LoLの最初期チャンピオンたちに小規模なビジュアル改善を施しています。目的は総合的なゲームプレイの一貫性/視認性/グラフィック品質を向上させつつ、対象チャンピオンのテーマや共感性も改善することです。

VGUとの最大の違いは、VGUがチャンピオンのビジュアル全体を刷新するのに対し、VFXアップデートでは対象チャンピオンのVFXのみを新しくする点です。ここでいうVFXとは基本的にスペル発動時、あるいはエモート使用時に使用されるエフェクトを指します。爆発、魔法、キラキラ、そういったものですね。ただ一部には例外もあります。たとえばオーディオチームがSFX(サウンドエフェクト)に調整を加えたり、新しいものを追加したりしたことでゲームプレイ上の正確性が大きく損なわれた場合(例:アップデート前のアニーのW)には、該当箇所のアニメーションやクイックキャスト表示に細かな調整を加えることもあります。ただし、ゲームプレイ、3Dモデル、テクスチャ、キャラクターアニメーションは変更しません。このようにVFXアップデートでは変更の範囲を限定しているため、VGUやASU(アート&サステナビリティ・アップデート)よりも素早く実施できます。

そして、VGUやASUよりも素早く実施できるからこそ、次のアップデート対象を選定するときの自由度もずっと高くなります。選定基準ではチームメンバーの情熱も重視しますが、アップデートの必要性が高いチャンピオンか?というのも大きな要因です。選定に際しては以下のような目標を掲げ、これをガイドラインとして使用しています。

  • 1目標:ゲームプレイ上の問題を修正する。ヒットボックス表示が不正確/存在しない部分がある、歳月を経てVFX部分が正しく機能しなくなっている、視覚表現としての正確性に欠ける(スキルの効果とビジュアルが正確に合致していない)などがこれに該当します。
  • 2目標:ゲームプレイの視認性を改善する(スキルを認識しやすくする)、総合的な視覚ノイズを軽減する(テクスチャが不必要なまでに細かいせいで生じるゴチャゴチャ感を軽減する)、スキルの視覚的なインパクトを調整する(明るすぎる、見えづらい部分を修正する)。
  • 3目標:テーマ表現を強化する(例:ヴォイドチャンピオンのヴォイド感を高めるなど)。

目標は重要度ごとにランク分けされており、ゲームプレイの視認性は常にテーマ表現の強化よりも優先されます。また、VFXアップデートの最優先目標は必ず不正確なヒットボックス表示の修正に設定されます。

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ブリッツクランクのR - VFXアップデート前後

VFXアップデートでは、この他にも考慮すべき点がいくつか存在します。たとえば…構造的なクリーンアップ。エンジニアはスパゲッティコード(スパゲティのように複雑に入り組んだコード)を解決しようと努力し、VFXチームはVFXにからんだマリナラ(血のようなトマトソース)を拭い去ろうと努力する、といった感じでしょうか。大昔であれば手を付けないという選択肢もありましたが、今はそうはいきません。どれほどの苦痛を伴うとしても、やり遂げなければならないのです(スパゲティコードにからんだマリナラソース…ああ…)。

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「The Curse of the Sad Mummy」のスタイルを目指してアムムのR用VFXを作っているところ

この他には、スキンのティアに対して見劣りするスキンも取り上げるようにしています。とはいえ時間は有限なので、スキンを選ぶ時にもその点は考慮する必要があります。そこでチームでは次のようなガイドラインを設けて標準的に使用しています。

  • 基本スキンが変更されている場合は、対象スキンでもその変更点を反映させる。たとえばスキルの範囲表示がゲーム内判定と一致する大きさに拡大された場合は、全スキンで同じサイズに揃えるなど。
  • 当該スキンがVFXアップデート以前にVFXの修正を受けている、または元々独自性の高いVFXを持っている場合は、アップデート後も同等の特徴を保持する。
  • 750 RPスキンは合理性が認められる場合に、小規模な調整を1点実施する。
  • 975 RPスキンは合理性が認められる場合に、小規模な再カラーリングを1点実施する。
  • 1350 RPスキンは過去にVFXアップデートを受けていない場合に、VFXを完全刷新する
  • 1820RPスキンは過去にVFXアップデートを受けていない場合に、VFXを完全刷新する。合理性が認められる場合はエモートにVFXを追加することも可能

このようなガイドラインを設定しているため、VFXがスキンティアと現在の水準の両方を満たす場合は、新規VFXを追加する可能性は低くなります(お気に入りチャンピオンの新スキンに真新しいVFXがついていたなら、アップデートの必要はないですよね)。

VFXアップデートの開発プロセス

まだ読んでくれていますか…?OK!それでは続きを。実際の開発プロセスを7つのシンプルな手順に分けて紹介してみましょう。

  1. アップデート対象のチャンピオンを選ぶ:選出理由にはアーティストが強い関心を寄せている、アップデートの必要性が高い、候補リストの最上位に位置している、などがあります。中にはVGUアップデートの規模を超えてしまう(VGU/ASU規模)チャンピオンも存在するため、非現実的な規模にならないように選定するのもこの段階です。「お気に入りチャンピオンのVFX、もうかなり古くなってるんだよね」と感じることもあるかもしれません。ただ改修は想像以上に難易度が高くなる場合があるのです。とはいえ、最終的にはどこかのタイミングでアップデートは実施していきます。
  2. 対象チャンピオンが決まったら、VFXアーティストがノーマルスキンに着手します。制作中は担当アーティスト、VFXアップデートチーム、社内のLoL VFXコミュニティー全体がコミュニケーションを取り、継続的にフィードバックを提供していきます。ここではサウンドデザイナーやゲームデザイナーをはじめとする多種多様な人が参加します。VFXアップデートの担当アーティストは大抵の場合1人ですが、フィードバックに関しては常時チーム体制で取り組みます。
  3. ノーマルスキンがある程度完成して承認された段階で、担当VFXアーティストが各スキンに着手します。ノーマルスキンの変更内容は各スキンにも反映されます。なお、古いスキンのほうが新しいスキンよりも変更点が多くなる傾向がありますが、これは通常、新しいものほど現在の品質水準に近いためです。
  4. 続いてQAテストを実施し、見過ごされた問題やバグがないかチェックしていきます。
  5. バグ修正の完了後は、VFXアップデートをPBEに実装します。通常はRedditやSNSに短い動画を投稿し、プレイヤー/コミュニティーからのフィードバックを募ります。
  6. 次にTwitter、YouTube、LoL PBEのSubredditなどを見回り、フィードバックを余すところなく収集していきます。このとき、対象チャンピオンをメインとするプレイヤーのSubredditもしっかり確認します。
  7. 最後にVFXアップデートをライブサーバーに実装します。リリース後に何らかの問題点が見つかった場合は、その後のパッチでアップデートを加えて修正します。

プレイヤー側からできること

VFXアップデートはVGUやASUよりも短期間で完了するため、製作途中で開発ブログを投稿することはありませんが、皆さんからのフィードバックはいつだって大歓迎です。とはいえ、寄せられた意見はできる限り目を通しているものの、そのすべてに返信することは残念ながらできません。ただし建設的なフィードバックや私たちが思いつかなかった代替案などが寄せられた場合は、より詳しく伺うために返信を送らせてもらうこともあります。

フィードバックをどこから送ればよいか迷ったら、ぜひr/LeaguePBE Subredditまでお寄せください。これまでもレオナのVFXアップデートに対するフィードバックスレッド(英語)やシャコのVFXアップデートに対するフィードバックスレッド(英語)などで活用しています。

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スレッシュのランタンVFX(開発中、2020年のVFXアップデート)

しかし自分のメインチャンピオンの話題ともなれば、建設的なフィードバックを書く難易度もぐっと上がりますよね。そこで以下に私たちが重視している要因をまとめてみました。ぜひ参考にしてみてください。

  1. 具体的な対処につながる

一番参考になるのが、「ここをこうした方が良い」というような具体的なフィードバックです。たとえば「○○スキンの新しいQの範囲表現には、同じティアの他スキンと同じ物が使えるのでは?」や「ヒットボックスが不正確に見えます。確認してください」のような内容ですね。あるいは「投射物がとても見えにくく、視認性が悪い」なども素敵です。これらの例はいずれも、具体的な対処につながるフィードバックです。

一方、フィードバックに具体性が欠けていると解決すべき点が不明瞭で対処が難しくなります。また、全面的な処置が必要になるもの(「テーマに合わせて欲しい」など)は通常、VFXアップデートの規模を超えてしまいます。

  1. 客観性

VFXも芸術と同様、さまざまな意見を生み出します。つまり、誰かにとってはお気に入りのデザインでも、他の誰かにとっては最悪だったりもするわけです。このため「ここの緑色がすごく嫌いなんだけど変えてくれない?」のような懸念は残念ながら解決できません(もちろん「ここの緑色はスキンに合っていない」のような問題は解決できる可能性がありますが)。

  1. おおむね総意と呼べる

これは大きなポイントです。いつだってできる限り多くの人を満足させたいと考えてはいるのですが、現実的には全員が同じものを気に入ることはありません。このため一人の意見よりも、圧倒的多数の意見を尊重する傾向は、やはり強くなります。たとえその「一人」が対象チャンピオンのメインであっても、残念ながらこれは変わりません。

また「LoLは世界的にプレイされているゲームである」という点も重要で、特定の言語・地域で流行っているものが世界的に受け入れられるとは限りません。これは「声の大きな人」ではなく、世界における多数派の意見を尊重しようとしている、とも言い換えられるかもしれませんね。

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最後に…絶対に間違っているアプローチを紹介させてください。それは「特定のアーティストを侮辱する」ことです。もちろん建設的な指摘は問題ありません(むしろぜひお寄せください)。しかしVFXアップデートは、情熱のもとに集った有志が取り組むプロジェクトであり、個人攻撃は活動の継続を困難にします。メンバーの中には、わざわざLoLチームのリーダーに「VFXアップデートはコミュニティーにとってプラスに作用するどころか有害かもしれない」と伝えた者もいました。私は、怒れるプレイヤーと情熱を消された開発者という組み合わせが何かを生み出すとは思えません。

建設的なフィードバックからは対象スキンにかける皆さんの情熱が伝わってきます。そういうフィードバックを読むのは本当に心躍る体験です。そこで生じる心の高揚こそが私たちの原動力で、LoLをもっと良いゲームにしようと思わせてくれるのです。

VFXアップデートのこれから

今回は以上です。何か新しい学びはあったでしょうか?これまでVFXアップデートの工程についてはあまり語る機会がなかったので、今後はぜひ改善していきたいと思っています。新しいVFXアップデートがリリースされて、それに関するSNS投稿を見かけたら、ぜひフィードバックを聞かせてくださいね。寄せられたフィードバックはできる限りすべて目を通すようにしていますから!

え…次のVFX対象ですか?すみません…まだ秘密です!でもご心配なく。今後もVFXアップデートは全速力で進めていくので、きっとあなたのお気に入りチャンピオン(のVFX)にも、惜しみない愛がキラキラと注がれることになるでしょう!



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