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/dev: ネコの集団、リフトメカ、バロンのリニューアル

シーズン2024に向けたオブジェクト変更の舞台裏をご紹介。

Dev作者Riot Phlox
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こんにちは。シーズン2024のオブジェクトの変更を担当するゲームデザイナーのEzra “Riot Phlox” Lynnです。今回は、ネコの集団、オーンの柱、メカバトル、バロンナッシャーの新しい外見についてお話しします。

すべては今年の2月、2024年に向けたゲームプレイ変更の早期計画から始まりました。LoLに変更を加えるにあたって高い目標の1つとしてあったのが、特に試合終盤を戦略的なレベルで変えたいということでした。当時は、ある種の「戦略的な差異」が必要だと認識していました。つまり、LoLを大規模かつ戦略的に改革するような方法です。また、レーン間にもさらなる差異を導入したい、特にトップレーンの価値を上げたいと考えていました。

そこでオブジェクトについて見直しを始めたところ、少々古い点があることに気づいたのです。バロンやドラゴンのダンスは何年も続いていますが、最後の大規模な変更は2019年で、しかもバロン自身に変更が施されたことは一度もありません。リフトヘラルドには満足度の観点で重大な問題があり、トップレーンがあまり楽しいものではなくなってしまっていたので、これも検討事項の1つとなりました。

全般的な試合のペースと展開の予測も気になるポイントでした。当時はプロセスの序盤だったので何度かブレインストーミングや試行錯誤を重ねてから、散乱状態だったプロトタイプをかき集めて、今後の方向性としておもしろいものがないか確かめました。

3フェーズの試合

最初に試したプロトタイプは、試合を独立した3フェーズに分割して、それぞれのフェーズが特定の条件によって開始するというものでした。その3つのフェーズとは、タワープレートが残っている序盤(0~14分またはドラゴンが2体倒されるまで)、中盤(後述の「群れ」が倒される、または25分にバロンが出現するまで)、そして終盤です。

ここで重要な懸念は、「試合のフェーズ間の区切りをはっきり線引きするのはおもしろいのだろうか?そして、可変的なのはおもしろいのだろうか?」というものでした。明確な1つのタイマーを設けるのではなく、オブジェクトに応じてプレートを増減させることに意味はあったのでしょうか?

3フェーズの初期テストは順調に進みました。可変的なフェーズ移行そのものはかなり楽しく、フェーズ導入によって状況に応じた興味深い試合がたくさん生まれ、誰がどのように試合を進めたかによって試合は大きく変化しました。ですが、このフェーズ開始条件にはたくさんの課題がありました。「エッセンス」と呼ばれる別のリソースシステムや、プレイヤーによって試合状態が変化するものについても試行を行いましたが、うまくいきませんでした。バロンピット周辺のオブジェクトのフローに関しては。多くの可能性が残っており、試合のあらゆる時点で向上の余地があることがわかったのです。


試合序盤:ネコだらけ

多様性を増やすために、新スタイルのオブジェクトを試してみました。ウィスカーのリトルレジェンドが集まった、ネコの集団です。これはネコの山(群れ?塊?いや、集団か?)で、毎分3体出現し、バロンピットをゆっくりと埋めていきます。

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ネコは何をするわけでもありませんが、2体目のヘラルドの代わりに「群れ」としてのボスを出現させることにメリットがあるかを探りたかったのです。2体目のヘラルドは、いつも少し変わり者扱いされていました。タワープレートを破壊できるわけでもなく、レーン戦もほとんど終わっているので倒されないことも多く、倒されたとしても微妙な使い方しかされませんでした。そのため、このフローに変更を加えるのは有意義だと思われたのです。

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また、エピックモンスターとして群れを扱ったことがなかったので、試すのにも良いタイミングでした。「エピックモンスターを部分的に倒すことの意義は?群れと戦うのは本当におもしろいのか?12匹のネコが激しく鳴いているときに、小競り合いをするのは正しいことなのか?」といった疑問の答えを導き出す必要があったのです。

また同時に、両方のジャングルでスカトルクラブのようなマンティコア型モンスター(そしてリトルレジェンドも、ありがとうTFT)を徘徊させてもみました。これは、普通の戦いよりも試合中盤のオブジェクトにメリットを持たせるような、争奪戦となる可変的なミクロオブジェクトをマップのあらゆる場所でテストするためでした。

ですが、マンティコアはまるでダメだったのでテストからすぐに消去されました。可変性が本質的に悪いわけではなく、アニメーションがなかったのが原因で、戦闘はただの大きなソーンメイルを反映させただけのもので、しかも試合の中盤にこれと戦わなければいけなかったからです。結局、新オブジェクトをジャングル中にばら撒くことはできない、と結論づけました。かなり複雑なものが求められる割に、得られるものは苦労に見合わなかったのです。ですが、マップの代替オブジェクトに関するこの初期テストから、ミニオブジェクトとしてレッドバフとブルーバフへの変更を思いつきました。これについては後ほどご紹介します。

一連のテストを終えた後、群れのオブジェクトに焦点を定めました。何かの群れというのは、新たなボスとしてふさわしいです。しかし、戦いがどう発生するか、報酬は何なのかなど、まったくの手探り状態でした。前に述べた「エッセンス」システムを採用する可能性がありましたが、この方向性もどうなるかわからなかったので、エッセンスシステムにこだわる必要はありませんでした。

群れのテストの1つとして、可変的に出現するオブジェクトを奇妙ながらも一貫性のある物語に結びつけようとしました。例えば、ネコの集団はマップのランダムな位置で鉱石を採掘していて、プレイヤーはそこの採掘場でネコと戦うことができる。ネコは採掘を終えるとバロンピットにあるメインの巣にテレポートして、蓄えを築き、より強力になり、倒した際の報酬が増えていく。

ですが、プレイヤーに定期的にレーンから離れるように求めるのは無理な話でした。6分経過時点でレーンから離れて、光るオーンの小さな柱からよくわからないネコを蹴落し、少しの資源と引き換えに有利を手放そうとする人なんていません。この部分もまったくうまくいかなかったので、すぐに案から消されました。

これによって学んだのは、群れは試合中盤よりも序盤のオブジェクトとした登場させた方が遥かに良いということです。ヘラルドも満足のいかないオブジェクトだったので、一石二鳥でした。不満の主な原因は、ヘラルドのタワープレートに対する強力な攻撃や、レーン戦の初期フェーズを破壊しがちなところです(マップの変更についてはこちらのブログをご覧ください)。ネコなら、ヘラルドでは叶わない方法で序盤の強力なチームオブジェクトになれる可能性があり、トップレーナーが先手を取る本当のメリットをもたらしてくれます。


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そこで、方向転換をしました。ネコの集団は、幽閉されたリフトヘラルドのパワーを吸い取るネコの大群に変貌したのです。ネコを倒すことで、最終的にヘラルドが解放されます。「群れ」とは別に、戦い方についても研究しました。あるテストでは、1匹のネコが仲間全員からパワーを集めて、巨大化してレーザーを放つというのを試しました。また、ヨリックのEのように遠くから飛びかかるのも試しました。このボスのためにたくさんのスキルを試し、ゲーム内で皆さんが見ることになる最終案を決定しました。弱体化する小型モンスターを召喚する、巨大なモンスターです。(残念ながら、ネコではなくなりましたが…)

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ウィスカーは消え、いるのはヴォイドグラブ(とヴォイドマイト)のみ。


試合中盤:メカヘラルド

それでもまだ、試合中盤のリフトヘラルドには問題が残っていました。幸い、良い(かもしれない)アイディアはありましたが、ちょっと奇抜なものでした。もしリフトヘラルドを操作できたら?ヘラルドに乗り、カニのように目いっぱい走り回れたら?

初期バージョンは、ヘラルドを倒して瞳が出現すると、シェリーに飛び乗って実質的にまったく新しいチャンピオンをプレイできる、というものでした。Qは遅い薙ぎ払い(シェリーが攻撃に使うものと同じ)、Wは突進、Eがシールドで、Rは沈む船から飛び出すかのようなジャンプ。誰でも変身できるタンクやシージ形態のようなものです。

聞こえは良さそうですよね?実際に良いものでした!…1、2試合くらいまでは。実際には、すぐに多くのプレイヤーがイライラするメカニックになってしまいました。強すぎるために相手をするのがイヤだから、という理由に加え、LoLではチャンピオンをプレイしたいのであって、やられ役のヴォイドモンスターをプレイしたいわけではないからです。何度かテストを繰り返しましたが、フィードバックの内容は賛否両論でした。そこで、プレイヤーラボでも試しましたが、そこでのフィードバックもせいぜい五分五分だったので振り出しに戻りました。

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とは言っても、まったくのやり直しというわけではありません。ヘラルドに乗るというアイディアはおもしろかったのですが、ゲームプレイが正しいものではなかったのです。ヘラルドになることよりも、ヘラルドの突撃をコントロールすることに重点を置いて2回目の試行を行いました。このバージョンは、プレイテストやプレイヤーラボで以前のものよりも遥かに好評でした。いくつかの問題(序盤でジャングルを突き進んでギャンクから逃れたり、飛び乗ることでスキルを避けたりすることができた)はありましたが、見込みがあったのですぐに調整と改善が行われました。


試合終盤:バロンとバロンピット

終盤の移行が失敗したことがわかったので、ヴォイドをテーマにしたマップの大改造を実験的に行いました。これらの変更の中には、外観だけのものもあれば、ゲームプレイに影響を与えるものもありました。包括的な疑問は、「試合のある一定の時点でマップを変形させて楽しいものにできるか」ということでした。

初期バージョン(後述)を試してみましたが、レーンの真ん中にある巨大な柱や壁で視界やミニオンが遮られ、とにかく不快でした。方向性としては素晴らしいものでしたが、理想とはほど遠かったのです。

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ヴォイド地形の次のテストでは、マップのそこら中にオーンの柱を召喚し、サモナーズリフトのすべての壁を大量のオーンの柱に置き換えました。前後関係を持って破壊される地形が必要だったのですが、現在の地形システムではそのように機能しないからです。

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バロンは出現するたびに、各範囲内のランダムな位置にミサイルを放って、ミサイルが通った地形を破壊する仕様でした。これにより各試合(そしてバロンの各出現さえも)がマップに有意義な影響を与え、一味違うものになったのです。各ミサイルはバフが大量についたミニオンで、それらが0.25秒ごとに発射されるため、この最初のプレイテスト数回では信じられないほどのラグがありました。余談ですが、このテスト自体は悪くないものでした。ただ、あまりにランダム性が強すぎて、おもしろいゲームプレイには至らなかったのです。

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そこで、バロンピット周辺に限定した、より部分的な地形破壊に移行しました。まずはピットのバージョンは3つ制作。墓ピット、ウォールピット、チューブピットで、どれか1つがランダムに発生します。バロン戦の地形が入れ替わることで、試合ごとに異なるおもしろさを出せるかどうかを確かめたかったのですが、間違いなく成功と言えるでしょう。

これはマップ全体を改修せずに、破壊可能なバロンの地形を変更するには、方向性としてはかなり合っていました。3つのピットそれぞれには多くの問題がありましたが、基本的なゲームプレイはとてもエキサイティングで変化に富んでいたのです。

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最初のテストでは、視界や壁がADCによって邪魔されたり、かなり横に歪んだりといった大きな問題がありました。ですが、これらはすべて解決可能なものでした。ゲームアナリシスチームと緊密に連携し、壁の近くにもう1本オーンの柱を置いた方がいいか、それとも壁を少し押し出した方がいいか、そういったことを確認しました。結論としては、墓ピットを除外することになりました。ベースのピットと酷似している一方で、危険性がより低かったので、総合的にはあまり価値がなかったのです。

最後に、バロン自身の大改修です。昔はひどい姿をしており、2014年に大型のアップデートがありましたが、それ以降は一度も変わっていません。なのでそろそろ、一生分とも言える規模のVGUを施しても良いでしょう。アートディレクターのGem “Lonewingy” Limは、バロンがヴォイドにおける真の代表で、深淵より出でる本当の恐怖の存在になれると考えていたのです。ここでの目標は、不安と畏怖──未知の恐怖をプレイヤーに抱かせること。そこで、全体的な変更を加え、ルーンテラに這い出るヴォイドの子で最もクールな姿に仕上げました。

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また、バロンファイトを調整するのにちょうど良いタイミングでもありました。それぞれのピットには、そのピットに合ったスキルを持つバロンがいます。長いチューブピットには残存し続ける裂け目があり、裂け目は通路を寸断して入口に危険をもたらします。ウォールピットも、脱出は一番簡単ですが、入口に向かって大きく引き寄せられる危険があります。そして最も閉所となるベースピットでは、『ワイルドリフト』のバロンにひねりを加えたものを導入しました。全員の頭上にコグ=マウのRのようなスキルを出して、狭いピット内でカオスな雷撃回避祭りが展開されるのです。バロンファイトでは壁が変化してスキルが吹き荒れるので、試合ごとに違う体験ができるでしょう。

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先ほどの可変的なオブジェクトの実験も部分的にこれに含まれます。バロンやドラゴンが倒され、一時的に落ち着いた状態になった試合に、奪い合いの対象となるマイナーなオブジェクトを導入したいと考えていました。残り時間が数分になると、試合のペースは失速する傾向にあります。

ここで登場する魅力的な改善ポイントが、レッドバフとブルーバフです。その昔、効果がミニ版デスキャップみたいだった頃は、実際にプレイヤーにある程度の結果を示しましたが、当時のバージョンにはいくつかの問題がありました。ミクロオブジェクトをあまり強力にせずに、争奪戦に似たゲームプレイを実現できないか、よりチームとして参加しがいのある方向に押し進めることができないかと考えました。今回の変更によって、いつバフを取るか、オブジェクトに対してどのように視界を確保するか、といった戦術的な判断がさらに必要になるでしょう。バロンファイトの前に敵からブルーバフを剥ぎ取ることが、これまでより意味のある行動となり、うまくいけば、デス状態やセットアップがもう少しメリットのあるものになるでしょう。

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全体として、これはLoLにおけるオブジェクトのフローに大きな変化をもたらすものですので、最初から完璧であることは期待していません。レーンの入れ替えがないことを祈っていますが…まぁ、それは置いておきましょう。このゲームの中でもずっと安定している部分ですが、長い間停滞してしまっている部分でもあります。これらの変更によって、もっと刺激的な場所となり、新鮮な気持ちでプレイできるようになることを願っています。

このゲームは常に変化し続けるのですが、その中核は「リーグ・オブ・レジェンド」から外れません。今回の変更は、まさにそれを体現しているかと思います。常に変化を続けるこのゲームが皆さんにとって楽しくなるように、ご意見やご感想をお寄せください。それでは、サモナーズリフトでお会いしましょう!




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