Dev
/dev:シーズン2024のマップ変更点

近くサモナーズリフトにやってくる変更点の概要を紹介します。

  • クリップボードにコピーされました

最後にLoLのベースマップが変更されたのは…なんと、2019年のことです。そして大規模な変更となると、話は2014年まで遡ります。もちろんサモナーズリフトは素晴らしいマップですが、その素晴らしいマップにも当然問題はあり、そうした問題はプレイヤーがマップの理解度を深めて習熟するほどに目立つようになってきました。そして、今回の変更でも問題を全部解決することは目指していませんし、新しい問題を生み出さないと約束できるわけでもありません。当然、新しい問題もいくつか出てくるでしょう。結局のところ、完璧なマップは存在し得ないのですから。

変更と目標

今シーズンのマップ変更では、いくつか異なる目標を設定していましたが、その最上位目標は「レーンのサイド差をより公平な状態にする」でした。レッドサイドとブルーサイドの各レーンには、ギャンク方法、戦闘展開、茂みや川に対する位置取りなどの面で多種多様な有利が存在します。もちろんこうした「有利」は変更後にも存在しますが、その影響度は下がっています。たとえば変更後のマップでは、レッドサイドのトップでレーンをプッシュしてもこれまでほど無防備にならないため、チャンピオン選択の神々があなたをレッド側に割り振ったという理由で「レーン戦は安全に進めなければ」と考える必要はなくなります。

マップ変更の第2目標は、ソロレーンをジャングラー(あるいはローム行為全般)からもう少し保護することでした。ギャンクは大抵のケースにおいて、序盤戦の主要アクションとして強すぎたためです。もちろん、レーンによってその理由は少しずつ異なりますが、具体的な理由については以下で掘り下げてみましょう。

トップと主導権

トップレーンは2人のプレイヤーがマッププレッシャーの掌握を目指して押し引きを続ける戦場ですが、特に序盤においては他のロールから受ける影響が大幅に低いポジションでもあります。一方で大半のプレイヤーにとっては、その命運がジャングラー(あるいは高スキル帯ではロームするサポート)の手に委ねられており、よほど大きなリードでもない限り自力で勝利を引き寄せることができないようにも感じられます。

そこで、今回の変更では序盤に他レーンがトップに干渉する能力を大幅に低下させ、1v1の舞台として磨きをかけました。とはいえジャングラーのギャンクが不可能になったわけではないので、引き続き注意は必要です。また、トップ側の茂みも変更して川の中央に点状の茂みを配置。サイドによる有利不利を低減し、視界の取り合いを制した際のインパクトを大幅に上昇させています。現在のライブ環境においても、「川の茂みの少し奥」は正解とみなされることの多いワード設置位置ですが、新しい茂みの位置はワードの最適な設置位置により近づくものの、ギャンク警戒の効果はやや弱まるでしょう。

Top_Lane_View.png

そしてジャングラーはトップレーンの序盤を左右する要因をもうひとつ握っています。リフトヘラルドです。リフトヘラルドはトップレーンで召喚されることが多く(居住地の最寄りレーンですからね)、ひとたび召喚されればレーン戦を完全に破壊していました。カニ様、神様。その前ではタワーなんて無力なのです。召喚されたシェリーはタワーを無慈悲に破壊し、任意の──あるいはジャングラーが選んだ──レーナーに大量のゴールドを渡し、レーン戦を終了させます。これほど早い段階でレーン戦が終わってしまうことに両チームのトップレーナーが不満を感じることも珍しくありません。劣勢側は負けが確定し、優勢側も手にしたリードを「レーン戦で」活かすことなく切り上げざるを得なくなるからです。そこで今回は、リフトヘラルドの出現タイミングを遅らせることで、レーン戦終盤のトップレーンが抱えていた唐突すぎる要因を大幅に軽減しました。

今回、ヴォイドグラブを追加してオブジェクト構成を再編したのも、トップレーナーが序盤のオブジェクト管理にこれまで以上の影響力を発揮できるようにすることを目指していたためです。また、トップ側オブジェクトがこれまでよりもチーム全体の有利につながるようにすることで、チームとして序盤戦の有利を狙う重要性も高めています。ヴォイドグラブの詳細については別の記事に譲りますが、ひとまずここでは「トップレーナーを外部の影響からもう少し保護すること」、そして「レーンがチーム全体の勝利により大きく貢献できるようにすること」が総合的な目標であると言えるでしょう。

ミッドに居場所を

Mid_Lane_View.png

ミッドレーンの変更もトップと似た内容ですが、設定していた目標はやや異なります。ミッドは(ライブ環境では)、圧倒的にギャンクしやすいレーンであり、プレイヤーも長年のあいだに「機動性が低い/セルフピール(自己防衛手段)を持たないチャンピオンにとってミッドレーンがいかに危険か」を実体験から理解するようになっています。影響力の高いチャンピオンが増え、ジャングラーが機動力の低いメイジを咎める方法に習熟した今、ザイラ、ブランド、カーサスを愛好するプレイヤーも、もはやミッドレーンは自分たちの居場所ではないと感じるに至っています。

ここで私たちが掲げた主目標は、メイジクラスのチャンピオンたちに向けて「ミッドの安全性を抜本的かつ大幅に高めること」でした。ミッドレーンにメイジたちの居場所を作ることができれば、メイジクラスも本来の意図に即した役割を取り戻せるでしょう。ここにアサシンをミッドレーンから追い出すという意図はまったくありません。そうではなく、機動性の低いチャンピオンがジャングラーに対峙する能力を考慮し、より活動しやすい環境を整えることを目指しています。つまり、変更後も当然ギャンクは狙えます。ただ現在よりも少し難しくなるというだけです。

mid_path_2.png

ミッドに関するもうひとつの主要変更点は、より安全なロームルートの追加です。変更後は両サイドのプレイヤーに新たなロームルートができ、川やローム先レーンに向かう時のリスクを大幅に下げられます。この他には同様の理由で、ミッドレーンの茂みの位置もやや後退させています。これで茂みから姿を現した敵チャンピオンが間合いに入るまでの所要時間が約20%長くなるため、序盤のギャンクの危険は大幅に低下し、機動性の低いチャンピオンたちの安全性もずっと上昇します。

mid_path.png

本質的にミッドレーンには、ジャングラーやサイドレーンを支援するためにある程度のロームが求められます。現在のLoLにおいて、安全にロームできる能力を持たないミッドレーナーは「役割を果たせていない」と感じられるでしょう。ここでの総合的な目標は、実用的なミッドレーナーの条件を緩和し、より幅広いチャンピオン(特に機動性の低いメイジやそれに近いチャンピオン)がプレイされる環境を作り出す素地を作ることです。当然ながら、私たちは特定のチャンピオンをミッドレーンから排除しようとしているわけではありません。むしろ高い影響力を持つメイジチャンピオンなどはこの変更から多くの恩恵を受け、変更導入直後に圧倒的な強さを発揮する可能性があるので、バランス調整の面でもしっかりとフォローアップしていきます。

ボットへと続く道

ボットレーンの変更はビジュアルとしては小規模ですが、総合的な影響度はかなり大きくなるものと想定しています。概要としては、トップレーンと同様にサイド間の有利不利をできる限り抑え、レーン出入り口と茂みの位置ができる限り公平になるようにしています。

一方、レッドサイドのボット側ジャングルには新たなギャンクルートが開いています。これは今回の変更中でも、特にリスクの高い変更点です。今回のマップ変更では、全体的にギャンクの有効性を低下させています。ですが、ボットレーンだけは例外的に上昇させているため、その妥当性とゲーム体験品質は注意深く監視していく予定です。特にレッドサイドのボットレーンは(ブルーサイドと異なり)従来よりも無防備な状態となっています。これはレッドサイドにはドラゴンピットの壁の生み出す距離がなく、そのために視界情報に反応する時間が短くなり、また川でのアクションに反応するタイミングがわずかに遅れるためです

Bot_Lane_View.png

また、この新ギャンクルートは川側からのアクセスが比較的容易であるため、レッドサイド側から三角ブッシュ(三角形の茂み)の視界を確保するのも簡単ではありません。私たちとしてもこのエリアのバランス調整はマップ屈指の高難易度であると認識しているので、特に注意深く見守っていきます。それ以外の点では、川の中央にある茂みも以前より奥深くに移動しており、サイドによる有利不利も少なくなっているため、視界の激しい奪い合いが予想される重要ポイントとなるでしょう。

bot_brush.png

しかし、レッドサイドのボットレーンをギャンクする場合には、この茂みにワードを設置できていないと難易度が大幅に上昇します。現在のライブ環境では、川の茂みの視界を押さえていればほぼノーリスクでレーンに行けます。ですが今回の変更では、レッドサイドのボットレーンがギャンクに対して無防備になりすぎる懸念があるため、この茂みの影響力を低下させています。この茂みを押さえれば川からレッドサイド三角ブッシュへの侵入を察知できるので、ボットレーンのギャンクルートは「一番大回りなルート」以外の全ルートがカバーされるわけです。

ジャングル差

最後に紹介するのはジャングルの地形変更です。こちらは各レーン向けの調整に合わせた変更、そしてドラゴン/バロンファイトに新たな魅力を創出するための変更です。ライブ環境における両エピックモンスターのピットは、川を挟んだ向かい側にひとつ道があり、川やジャングルの奥から近づく道がある比較的近づきやすい地形をしています。

Bot_River_View.png

今回の変更では、両ピットでの戦闘を「単一チョークポイント(狭路)をはさんで立ち回る場所」から「複数の角度からしかけられる場所」に変えることで、戦闘展開パターンの刷新も目指しました。ピット入り口を巡る攻防/戦術は長い時間のあいだにほぼ最適解が出ており、多くのプレイヤーもその答えに沿ってプレイするようになっていたからです。また、駆け引きが発生した場合も、現在はエンゲージ/オブジェクトからの撤退が容易なチームが有利になる傾向がありましたが、変更後はサイド間での公平性がやや改善されるでしょう。

加えて上記調整は、両チームにジャングル移動を伴わない2つめのルートを提供することになるため、ロームをより安全にもするでしょう。総合的には「ジャングラーのギャンクを(特に序盤戦で)難しく」しつつ、「ジャングラーが試合への影響力を失ったとは感じさせない」ことを目指したということです。

いかにしてここに至ったのか?

マップ変更は怖いものです。「リーグ・オブ・レジェンド」のゲームプレイは、現在のマップを前提にチューニングされていますが、その多くはあまり明示的ではありません。オレリオン・ソルのブラックホールの大きさ、アクシャンのスイング距離、そして超巨大チョ=ガスの腹囲…。こうした要素のバランスはマップをほんの僅かに変えただけで崩壊してしまいます。しかも、過去に学ぼうにも前例はほとんどありません。ちょっとしたモード、ずいぶん昔の試作バージョン…そうした資料しかなく、普段よりも予測不能性が高い状態でしたが、それでも私たちはマップ変更が必要だと考えていました。そこで、私たちはまず手を動かし始めます。

early_river_concept.png
バロン/ドラゴンピットを川の真ん中に配置していたマップの初期コンセプト。

バロンが川の真ん中に鎮座していたらLoLは一体どうなるでしょう?それがドラゴンだったら?サイドレーンのタワー下に小道を引いてダイブを誘引したら?川に大きな島を作ったら?主目標はやはりサイドの公平性、そしてマップ中央にある各主要エリアの全面改修でした。壮大な夢であり、正直に言えば、当時は実現できるかどうかも確証が持てなかったほどです。

それでも私たちはまず行動を起こしました。古の時代の(やや時代遅れになった)ツールを発掘し、イテレーション(試行錯誤サイクル)を回して案を試し始めたのです。無限のリソースがあればゼロから新マップも作れますが、現実には当然「選択と集中」が必要です。そこで私たちは、川の真ん中にエピックモンスターを配置する案のような野心的なアイデアを議論し、簡易バージョンを作成してテストを開始しました。以下はその当時のマップです。

early_wall_restructure.png

全レーンで川へのアクセスが容易になり、さらに「窪み」が追加されています。さらに茂みの位置も微調整し、このマップでテストを実施しました。結果は…「まずまず」。優れたマップとは言えませんでした。窪みはクールなアイデアでしたが、用途は限られていました。特に粗さが目立ったのはジャングルの区分けでした。細切れの箇所が多すぎて、地形としての説得力を失っていたのです。経路を意味あるかたちで塞いでもおらず、実質的に存在意義を失っていました。また、窪みやトップレーンに配置した岩の一部は視界の塞ぎ方が特に好ましくありませんでした。

しかし、これこそがイテレーションを回す意義です。私たちはこうして岩の配置に関する知見を学び、位置を変えて再びプレイテストし、それも酷ければまた新たな岩を配置していきました。ちなみにこの段階のイテレーションで地形をいじる際には、サモナーズリフトの既存の岩を拾ってきて別の場所に複製し、キメラのように重ね置きした「グロテスクな塊」を配置していました(アーティストに見つかりませんようにと祈りながら)。

top_in-dev_jank.png


in-dev_mid_jank.png
新しい壁/茂みの開発中に使っていた「グロテスクな塊」の例。

地面には穴が空き、オブジェクトの重なり合いも著しく、川には大量のカエル…はい、最高ですね!「みじめじゃない」マップ変更に向けた第一歩ですから。安定している現行バージョンを変更する場合、着手直後にはみじめな状態になることが多いので、実はこうしたことが大切だったりします。

そして私たちは壁をいくつか統合し、前後の位置を調整し、そしてミッドレーンに配置した巨岩を真っ二つにして小道を作っていきました。

その次は茂み配置の深掘りです。茂みの価値とは、基本的に近隣にある壁が生み出すものです。戦闘時の用途、周辺地形の視界、茂み自体の重要性などはその壁に大きく左右されます。また茂みは、地形自体が抱える多様な問題の解決策にもなりえます。茂みの配置/サイズ選定は重要な作業ですが、繊細な注意力も求められます。

updated_brush_and_wall_concepts.png
壁と茂みの位置/サイズを刷新した、ほぼ最終版の見下ろし型マップコンセプト。

茂み同士を離しすぎるとジャングル内に戦場の霧(マップ上で暗く表示されているエリア)が広がりすぎてしまいます。しかし近すぎれば逆に茂みの価値が失われ、冗長な印象になり、戦場の霧も完全になくなってしまいます。茂みはコーナーに視覚的特徴を付与するのと同時に、周辺の視界を扱いにくくします。新しい茂みの配置では、交差路にサイドの有利/不利がある、近づく動機がなくなる、特定の角度で視界が開けすぎるといった問題を多く解決できたと思います。とはいえ開発時にはジグソーパズルのような難しさもあり、小さな茂みの位置を何度となく微調整したりもしました。ドラゴンを巡る戦闘が川のボット/トップ側、あるいはレッド/ブルー側のどちらからでも行えるようにと。

開発中にはこの他にもタワー横の窪み、アリーナマップのような深海、基本マップ用の新ジャングルプラントといった見どころのありそうな案があったのですが、いずれもこれだ!と確信できるほどではありませんでした。これらについては、また機会があればいつの日か。

サモナーズリフトはまさにこの「これだ!」という要素で構成されるマップですが、可能性が尽きたわけではなく、クールなアイデアはまだまだたくさん眠っています。もちろんサモナーズリフトは特別な場所ですから、どんな変更であっても真剣かつ徹底的に考慮を重ねます。今回の変更が皆さんのゲームにポジティブな影響を与えることを、チーム一同心から願っています。皆さんの感想もぜひお知らせください、それではまた!



  • クリップボードにコピーされました

関連記事
関連記事