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/Dev TFT:バロン vs T-Hex

TFTの怪獣といえば、バロンとT-Hexですよね。今回は両者の大決戦について、チームが開発秘話を明かしてくれました。

Dev作者Rodger “Riot Prism" Caudill
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TFT開発チームが語らう/Dev TFTのシリーズ企画へようこそ。今回の特集は「ルーンテラ リフォージ」の二大召喚ユニット、バロン & T-Hexの制作秘話です。本記事ではさらに2体に対するプレイヤーの皆さんの反響と(もうセットも半分以上終わっていますからね)、そうした反響が未来のTFTに与える影響についても紹介していきます!それではまず、今回の担当ライアターを紹介しましょう:

Steve Oh:「ルーンテラ リフォージ」のアニメーションリード、バロンとT-Hexのアニメーションを担当

Jimmy “Riot JimJam” Vu:TFTのシニアVFXアーティスト。バロンナッシャーのVFXを担当

Mike Barquero:TFTのVFXアーティストII。T-Hexのコンセプト立案から実装までの全工程に参加

Rodger “Riot Prism” Caudill:TFTのコミュニティーマネージャー。パッチノートや動画コンテンツなどの文章を書いている


「怪獣大決戦」という要望 - Steve Oh

「このセットではプレイヤーに、巨大に育てたT-Hexと敵のバロンが激突する怪獣大決戦を体験してもらいたい。それを鮮烈な思い出にしたい」すべての始まりはKentのこの一言でした。これを聞いた瞬間、ならば両ユニットは視覚的にしっかり差別化する必要があるぞと私たちは確信しました。

TFTに特性由来の召喚ユニットが2体出るのはこれが史上初めてでした。最も近かった前例は「ギズモ&ガジェット」のイノベーターでしょう(サモナーズリフトからアニーのティバーズとヘクステックドラゴンを流用)。しかし、バロンもT-Hexもルーンテラを象徴するキャラクターですから、両者を登場させるとなれば大仕事です。両者には既に多くのファンがおり、物語設定まで存在しているわけですから、プレッシャーも相当なものです。大変な仕事になることは間違いありませんでした。


バロン出現 - Jimmy Vu

TFTの新ユニットとしてバロンナッシャーを登場させると知った時、チームは我を忘れて喜びました。私たちのチームはチャンピオンの扱いには慣れていますし、それも大変おもしろい仕事ですが、バロンほどの「大物」を登場させられるチャンスはまた別腹なので、両手を挙げて歓迎したのです。バロンナッシャーといえばサモナーズリフトの伝説的存在ですから、荘厳さは絶対に必要です。そして、それを実現するには職種をまたいだ協力と貢献が必要です。

今セットのバロンはヴォイド(8)を達成した報酬ですから、召喚時の演出でも不吉で巨大な存在であることを示そうと考え、出現時に恐ろしい咆哮を上げ、周辺エリアに範囲スタンを与えるようにしました。また、出現後は3つの異なるスキルを順番に使用し(サモナーズリフトでの振る舞いに近づける仕様)、巨大な脅威として戦場に君臨します。

過去セットに登場したシルコ、ソーム、ノムジーらのTFT独自キャラクターと同様、バロンの3Dモデル、リグ、アニメーション、VFXも今セットに合わせて新規製作されています。

特に3Dモデル製作では、バロンの背面をしっかり作る必要がありました。サモナーズリフトならばバロンの背後を目にすることがないため、これまでは背面を作り込む必要がなかったのです。こうして私たちはまず、バロンのお尻…コホン…背面を作ることになりました。

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アニメーション面で私が一番気に入っているのは「酸を吐くスキルの溜めアニメーション」です。Steve Ohが作ってくれたアニメーションは素晴らしく、大量の酸液がバロンの胃から口へと上ってくる雰囲気がとても良く表現されています。私がVFXを製作するときもこの見事なアニメーションを強調したくて、酸液が上がってくる様子を示す紫のVFXをうっすらと追加するだけにしました。ごくごく細かなディテールですが、これもTFTのバロンの「らしさ」を支えてくれているのではないかと思います。

ゲームプレイとビジュアルの一致度という点においても、凶悪な怪物らしさが出せたのではないかと思います。育ったジャングラーならソロ討伐できるような存在ではないのです。


T-Hexの建造 - Mike Barquero

開発中のアートレビューではT-Hexのいろんな初期コンセプト案が出ていました。『レジェンド・オブ・ルーンテラ』の象徴的召喚ユニットをTFTに登場させられる!と心からワクワクしたことを今でもよく覚えています。

実は当初、T-Hexはもっとダークで怖いメカモンスターでした。現代の映画に火器装備の巨大恐竜を出すなら…という感じの姿です。もちろんそれもカッコよかったのですが、TFTのスタイルとは合致しなかったし、ハイマーディンガーが作りそうな科学魔法的スーパーメカでもありませんでした。そこで私たちは即座にアートの方向性を調整し、よりTFTユニバースに合致する姿にシフトさせました。こうして出来上がったのが、この上なく懐っこいメカ恐竜に、この上なく凶悪な武器(ビーム兵器を含む)を装備させたデザインです。TFTらしい可愛らしさを示す要素の多くは、今も小さく非力な状態のT-Hexに見ることができます。辛く苦しい連敗中でも、小さく可愛いメカ恐竜を眺めれば「お前のためにやり通すからな」と思わせてくれますよね。ちなみに、デザインの模索中には可愛「すぎる」T-Hexの案も出ていたんですよ。

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続いてはゲームデザインとアニメーションが共同でT-Hexにふさわしいスキルセットを考えていきました。しかし、T-Hexは後からプロダクションパイプラインに入ったユニットで、しかもゼロから作るオリジナルキャラクター(TFTチームにとっては比較的新しい取り組み)であったため、製作実務はできるだけ早くスタートする必要がありました。

ゲームデザインチームにはこの2体の制作に際して明確なビジョンがありました。そのうちのひとつが「両者をボードに登場させて怪獣大決戦をさせる」というものです。このコンセプトを実現するにあたり、当初私たちはT-Hexに炎を吐かせていました。しかしその後、T-Hexをヘクステック最高峰の兵器として描くならばもっと優れた攻撃手段があるはずだと考えるようになります。こうしてたどり着いたのが、青色の電撃レーザービームでした。これならば、ピルトーヴァー屈指の破壊兵器に搭載される攻撃手段にふさわしいだろうと。このレーザービームは「画面専有力」も抜群でした。ゲームプレイの視認性を妨げないことは前提となりますが、こうした強力ユニットには重要なポイントです。発明王ハイマーディンガーも称賛するレベルの大勝利ですね。ちなみに「怪獣大決戦」というビジョンは小ネタとしてもゲーム内に存在しています(いわゆるイースターエッグ要素)。★4 T-Hexがバロンをキルすると「バロンナッシャーの頭部」というアイテムを獲得するのです。特に何の効果も持たないアイテムですが、文字通りの死闘であることは伝わりますよね!

そこから先は、何もかもが自然に定まっていきました。アニメーションチームとゲームデザインチームの議論は本当に白熱しましたし、新しいキャラクターの開発を新しいワークフローで進める大変さもありました。しかし、それでもやる価値があったと私たちは確信しています。物語をゲームプレイで表現しきれた(非常に重要な目標です)ことに加え、リリース直後からT-Hexのテーマデザインを多くのプレイヤーに愛してもらえたからです。

T-Hexは愛の産物でした。厳しいスケジュール、そして『レジェンド・オブ・ルーンテラ』の既存コンセプトを十全に活かし、バロンと大決戦できるほどの大型ユニットにするという要件…すべてが途方もないストレスでしたが、私たちはこれらの課題を一つひとつクリアし、その過程で数多の教訓を得てきました。その教訓は今後のセットでしっかりと活かしていくつもりです。

TFTオリジナルキャラクターの反響と今後 - 全員

もうしばらく前になりますが、「ルーンテラ リフォージ」のDev DropやPBEに寄せられた好意的な反響には未だに驚かされます。作ったものに対して大きな反響があるとやはり嬉しいですし、モチベーションもぐっと上がります。チームが苦労してゼロから作ったユニットであれば尚更に。こうした肯定的なフィードバックは、私たちにあの方向性で良かったのだと再確認させてくれますし、今後の新キャラクターコンセプトではさらに限界を超えていこうという想いを一層強くしてくれます。

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完全新キャラクターを開発してTFTのスタイルにマッチさせていくチャレンジは、何度やっても非常にやりがいがあります。新ユニットの製作は、単に3Dモデルを作ってゲームデザインすれば終わりというものではありません。シルコ、ノムジー、あるいはソームといったユニットを制作する時にも、セリフ音声、サウンドエフェクト、スプラッシュアート、ユニバース内でのナラティブなどを製作する必要がありました。求められる仕事量も凄まじく、それには制作の各段階でマーケティングチーム、PIE(プレイヤー・イマージョン&エクスプレッション)チーム、Sparks(外部スタジオ)、ナラティブチーム、果てはプレイヤーコミュニティーチームまでが関与します。小規模チームの素晴らしさはここにあります。ゲーム設計に全員が参加できるから、各人が持つ専門知識や能力が活きてくるのです。

TFTはずいぶん大きくなりましたし、現在進行系で成長中です。しかし私たちは今後も、これまでのように多様な職種の交流が生み出すコラボレーションを維持していきたいと考えています。次のセットなどは、まさにその好例となるでしょう。『リーグ・オブ・レジェンド』内のひとつのモードとして始まったTFTが、今や同作からコンテンツを借りるだけではない段階まで成長してきた。これには私たちも驚喜しています。ライアットの各ゲームをプレイする皆さんも、TFTがこの分野で先駆者となり、陽気なスタイルと独自のゲームデザインで革新し続けてきたことにきっと驚かれることでしょう。私たちは今後のセットでもこうした挑戦を重ねていきます。きっとその先では、ライアットの他のゲームがTFTから「コンテンツを借りる」日も来るでしょう。いつかの私たちがそうであったように。



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